おやすみお月様 ページ2
「口の端に着いてる」
「ついてるのね」
教えても言葉の理解はできてない。ただ繰り返すだけ。
真っ黒な瞳でクロロを見上げるだけ。
一日中ずっと同じ場所でじっとして、話しかけられてもその言葉を繰り返すだけ。言葉の意味が理解できないことがあり表情はずっと無表情。
少女は精神を病んでいる。
一体どんな体験をしたのか精神は壊れ、まるで真似っ子する人形のようだ。
痛いだとか苦しいだとかは感じない。それら全て違和感として感知される。
「んう」
クロロは少女の顎に指を添えて上を向かせると口の端に口付けた。下唇を食み、軽く指で唇を開かせると素直に応じる
少女の口からは熱い吐息が漏れ心做しか瞳に色が浮かんでいるように思える
「おわり」
クロロは濡れてしまった唇を拭ってやるが、終わりという言葉が理解出来ない彼女は自ら唇を寄せる
しかしクロロが終わりと言えば終わり。
軽く躱されて新しいシーツが敷かれたベッドへ下ろされる
少女は終わりという言葉が分からないためその前の行動を続ける様子が多々見られる。
それに飽きも感じないのはやはり心が壊れてしまっているからなのだろう。
クロロが寝転ぶ少女の瞼に触れれば、反射的に少女の目は閉じられる。そしてその行動は続けられようやく眠る。
食事も睡眠も自分で行うことをしない。ほっとけば死んでしまう彼女はまさにクロロの手の上。
腰まである白く長い髪、黒曜石を縁取る長く白いまつ毛
病的なほど白い肌。静かに眠る様子はまさにドール
佇んでいれば気品があり高貴な雰囲気すらある。しかし彼女がとる行動は奇妙な事ばかりだし、たまに野性的な行動もするし幼子のようでもある。そんなちぐはぐな所がクロロのお気に入りである理由の一つだ。
実際の年齢は誰も知らない。見た目だけで言えば10代。しかし、人は心を病むと成長も遅くなるこもあるという。故に見た目だけでは判断できなかった。
クロロが出会ってきた人間の中でこれ程ちぐはぐで不思議な生物は初めてだった。
「君はどんな夢を見るのかな」
夢は脳が記憶の整理をしている時に見るものだという。ならば何を考えて何を思って何を覚えているのか分からない彼女は一体どんな夢を見るのだろう
眠る彼女の頬をさらりと撫でて再び夜の世界へと消えていった
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作者名:むよくちゃん | 作成日時:2023年11月22日 19時