とある1日 ページ1
ある廃れた廃墟で真っ白な少女が月を眺めていた
暑い季節が終わり徐々に涼しくなっていく季節
その夜は湿気もなく非常に過ごしやすい夜だった
昔は誰かの屋敷だったのだろう廃墟の2階で、少女は埃まみれのソファーに座り、これまた置き去りにされた埃まみれのぬいぐるみを抱えて、ヒビの入った窓から月を見上げる
朝から晩まで少女は空を見上げていた。
空を映しているはずの瞳は月明かりを映さず深い夜だけを映していた
明かりは月のみで、月が雲に隠れれば部屋の中は闇に包まれる
そんな廃墟で彼女は1人待っていた
記憶も感情も無くしてしまった少女を知る一人の男を
「まだ起きてたのか。先に寝てても良かったのに」
部屋の入口から入ってきた男を見て少女は口を開く
「さきにねてても、よかったのね」
舌っ足らずで拙い言葉
「お腹すいてる？空いてなくても君はもっと食べた方がいいけど」
額に布をまきつけ白いシャツを纏う男は少女の体を上から下まで見て言った
「お腹すいてるのね」
少女は男…クロロの言葉を繰り返す
先程から会話が噛み合っているようで微妙にキャッチボールが出来てない。
しかしクロロは特に気にする様子もなく、少女の隣に座りサンドイッチを手渡した
少女はそれを受け取ると、目線より少し上に掲げてまじまじと色んな角度から見つめる
「食べていい」
「たべていいのね」
許可が出てようやく口へ運ぶ
その一口はあまりちも小さくうさぎが野いちごを頬張っているようだ。
一体どれほど時間がかかるのかと言うほど小さな一口で、無表情のまま咀嚼している
「レタスが落ちるぞ」
三角のサンドイッチを両手で持って食べる少女だが、食べるのが下手くそでボロボロと中身を落としてしまいそうである。そうなるとただのパンだ。
クロロはサンドイッチを持って落ちないよう手伝ってやっていたのだが、少女はサンドイッチから手を離し完全にクロロに預けてしまった
たっぷり塗られていたマヨネーズが口の端に着いているがそんなことは気にしない。黙々と食べ続けサンドイッチが無くなるとマヨネーズのついたクロロの指をしゃぶり始める
それを面白いものを見るような目で観察していたクロロだが、やがて噛み始めたので反対の人差し指で額を押して辞めさせると「んう」と声にならない音を上げて離れた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むよくちゃん | 作成日時：2023年11月22日 19時
