特級術師は逃がしてくれない。【乙骨憂太】

奇譚 ページ24

「もう大丈夫だよ。怖かったね」


ひょいと呪霊から飛び降り、

泣き出す子供に目線を合わせてしゃがみ

頭を撫でている。






.....でも



乙骨も気付いてはいるだろうが、

もう一体、先ほどよりは小さめの呪霊が

裏路地に逃げて行った。




小さめだったけど、すごく嫌な感じがした。




乙骨に声をかける暇もなく呪霊の後を追って、


さっきの任務の時とは別の汚いビルに駆け込んだ。






....結構走らされたな。




カンカンと鉄筋の階段を走って駆け上がっていく。




『ﾊｧ...ﾊｧ....もう...っ！！』




やっと階段を登るのをやめて一室に入った呪霊に、

呪力を飛ばす。





祓えた.....と思ったら、



ひしゃげた丸い胴体が半分に割れて、




新しい呪霊が出てくる。



さっきと、全く同じ呪霊だ。





『........は？』




祓えてない？



もう一度、先ほどより出力をあげてふっ飛ばす。






また、出てくる。





しかもこいつ....



中から出てくるやつのほうが明らかに呪力が強い。



『....っはぁ？』




"祓えない"呪霊に出会った事がなかった。


....しかし、このままだと最終的に私の呪力が尽きて

＿＿＿＿＿＿＿殺される。




飛びついてくる呪霊の影を固定する。


呪力を使い続けたまま、急いで頭を働かせる。





こいつの蘇生回数には限界があって、

その回数まで攻撃し続ければいいのか。



それとも最大出力の呪力を打ち込んで、

蘇生出来ないようにする事が可能なのか。





＿＿＿＿ どっちにしろ、真希や乙骨のように

呪具を持たない私は、素手か術式で祓うしかない。






領域展開は...

呪力の消費が激しくて、リスクが大きすぎる。



もう少し様子を見てから、

万が一の為にとっておくべきだ。





どんどん呪力が大きくなっていく敵を目の前に、





『......やるか』





影の固定を、解いた。

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