ビーフシチュー 第一話 ページ40
痛む身体を押さえながら、夜の住宅街で足を引きずって歩く。一歩、一歩と進む度に身体には激痛が走り、油断したら気絶しそうだ。
しかしこんな所で倒れるわけにはいかない。
あと少し、あと少しで……
｢……つ、いた｣
ようやくたどり着いた家の前。”工藤”と書かれた表札の下の、インターフォンを押してそのまま倒れ込んだ。
｢……こんな夜更けに誰かと思ったら、あなたでしたか。Aさん｣
少しして出てきた糸目の男は、目を見開いてからそう言った。
私は立ち上がれないまま、余裕ぶって笑ってみせる。
｢ちょっと、休ませて……｣
そしてそれだけ言って、そのまま目を閉じた。
ブランケットの温かさと、鼻腔をくすぐる柔軟剤の香り。
次に気がついた時、私は工藤邸のソファーに寝かされていた。
｢相変わらず無茶ばかりしているようだな｣
｢……ライ｣
寝起きの私に声をかけたのは、先程の糸目の男ではない。黒髪で、緑色の目の下にクマのある……かつて”ライ”と呼ばれた、組織一のスナイパーだった男。
｢その名で呼ばれるのは少し心外だ｣
｢……赤井、さん｣
そう呼び直すと、彼は優しく微笑んで私の頭をポンポンと撫でた。
こうやって子ども扱いされるのは、私達が”ライ”と”カルーア”だった頃から変わっていない。そして彼が赤井になった今でも、こうされるのが嫌ではなかった。
｢大きな傷は無いようだが、どこか痛むところは？｣
｢……身体を打っただけ。少し休ませてもらえれば自分で帰れる。ごめんなさい、こんな時間に押しかけて｣
｢それは構わないが、彼に迎えに来てもらうことはできなかったのか？｣
”彼”とは、零の事だろう。
｢……め、迷惑かけたくない、というか｣
｢ホォー……でも俺にはかけてもいいと｣
顎に手を当てた彼に｢そうじゃなくて！｣と否定すると、｢分かっているさ｣と揶揄うように笑われてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 860人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えるみ(プロフ) - chiさん» コメントありがとうございます〜っ！！私も早く引っ付けたいです🥰少しずつ更新していきますのでぜひ読んでくださいね！ (2022年7月16日 18時) (
レス) id: 5298c64629 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - 想いあってるのに引っ付かないのもどかしくて切ない(T^T)更新楽しみにしてます♡♡ (2022年7月15日 22時) (レス) @page39 id: fa74c912f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えるみ | 作成日時：2022年6月11日 13時
