似たもの同士 第一話 ページ35
パシンと乾いた音が路地裏に木霊する。
それと同時に、頬には鋭い痛みが走った。
｢…………｣
手を下げずにこちらを見つめるAの目には、怒り以外の感情が含まれているようにも感じた。
夜のビル街には火の粉が飛び、辺りを橙に照らしている。何台分ものサイレンが、この路地を出てすぐの燃える建物を目指して響き渡っていた。
｢……手酷いな｣
｢…………｣
叩かれた頬に手を添え、苦笑してみせる。
彼女は何も答えないまま、こちらを睨んで唇を噛んでいる。今しがた僕に平手打ちを喰らわせたその小さな手は、震えていた。
｢……A｣
名前を呼んで一歩踏み出すと、対して彼女は距離をとるように一歩後退り。
また一歩、一歩と近づこうとすると、彼女は勢いよく振り返って逃げるように去ってしまった。
｢……また怒らせてしまったな｣
｢今回ばかりは、
一部始終を見ていた風見が、眉間に手をあてため息をつく。確かに今回は、随分と心配をかけてしまったのだろう。
詳しく話せば長くなるが、簡単に言えば僕はまた死に急いでしまったというわけだ。
火を噴いて崩壊を始めたビルに飛び込んで、逃げ遅れた子どもを抱え裏側から飛び降りる。今考えれば確かに無茶だったが、体が勝手に動いていたのだから仕方ない。
そしてその直後にビルは崩れ落ちたものだから、表から見ていたA達には僕が死んだかのように見えたのだろう。
｢嫌ですよ。また泊めてくれだなんて｣
｢分かってるさ。少ししたら追うよ｣
今日のAは、普段部下の前でツンケンしているのとは訳が違う。
彼女が最も怒るのは、僕が犠牲になりうる様な作戦を立てた時。僕が無茶をした時。
前から心配性というか、過保護な面はあったものの、景光が死んだ後は特に神経質になっているようだった。
｢風見、君この辺詳しいだろう。
まだ開いている……そうだな、和菓子屋なんてあったりしないか？｣
｢和菓子……あ、たい焼き屋なら確か向こうの通りに。
こちらを睨んだあの目も、未だに主張するこの頬の痛みも、全部君なりの愛なのだと知っているよ。
僕にはまだ、君の不安を取り除いてやる力は無いけれど。その不器用な愛だけでも、受け入れてやりたいんだ。
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えるみ(プロフ) - chiさん» コメントありがとうございます〜っ！！私も早く引っ付けたいです🥰少しずつ更新していきますのでぜひ読んでくださいね！ (2022年7月16日 18時) (
レス) id: 5298c64629 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - 想いあってるのに引っ付かないのもどかしくて切ない(T^T)更新楽しみにしてます♡♡ (2022年7月15日 22時) (レス) @page39 id: fa74c912f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えるみ | 作成日時：2022年6月11日 13時
