検索窓
今日:55 hit、昨日:86 hit、合計:117,501 hit

風見の苦悩:再 第二話 ページ30

「このモンブランおいしいっ!お兄ちゃんも食べてみてよ!」

「ああいや、自分…俺は甘いものは得意じゃないからな。A……が俺の分まで食べてくれ」


上司を呼び捨てにしている事を脳内で必死に謝りながら、ぬるくなったコーヒーを啜る。
テーブルを挟んだ向かい側。自分に合わせて黒髪のウィッグを被った(アヅマ)さんは、丸い頬にモンブランを詰め込んだ。


「んいひ……」


彼女がこんなにも緩みきった顔を見せたのは初めてではなかろうか。しかしそれが甘いスイーツの力なのか、全て彼女の演技なのか分からないから恐ろしい。


「……ねえお兄ちゃん」

「な、なんだ?」


口をカラにして、別のスイーツに手を伸ばしかけた彼女がふいに口を開いた。フォークは皿に置いて、右手で頬杖をつく。

そして左手を死角に……自分の右後ろのテーブルに座るターゲットの死角になる場所に置いて、トントトン、と不規則に指を動かした。


これは、モールス信号。


「それで大学の友達がね〜?」


彼女は他愛もない話を続けながら、指を動かし続ける。
自分はその声を聞き流して、モールス信号を読み取るだけでもかなりの集中力を要しているというのに、彼女の脳内はどうなっているのだろうか。


「ね、いいでしょお兄ちゃん?」

「……ああ、分かった」


なんとか読み取れた彼女からのメッセージは、”BLACK(クロ)””ESCAPE(逃走)”の二つの単語。

奴はクロだった。もう時期席を立とうとしているから追うぞ。ということだろう。


「やったあ!ねぇ今から買いに行こう。限定品だから無くなっちゃうかも」

「そうだな、行こうか」


モールス信号をうっている間、自分はオネダリされていたのか。

彼女の演技力と頭脳に改めて感心しつつ、ターゲットを待ち伏せる為席を立った。

風見の苦悩:再 第三話→←風見の苦悩:再 第一話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (155 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
860人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

えるみ(プロフ) - chiさん» コメントありがとうございます〜っ!!私も早く引っ付けたいです🥰少しずつ更新していきますのでぜひ読んでくださいね! (2022年7月16日 18時) (レス) id: 5298c64629 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - 想いあってるのに引っ付かないのもどかしくて切ない(T^T)更新楽しみにしてます♡♡ (2022年7月15日 22時) (レス) @page39 id: fa74c912f5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:えるみ | 作成日時:2022年6月11日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。