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風見の苦悩:再 第一話 ページ29

「このケーキおいしいねお兄ちゃん!」

「あ、あぁ…そうだな……ア、アヅ……」


げしっ、とテーブルの下で音がした。
数コンマ遅れて、蹴られた脛に痛みが襲う。


「……お、おいしいな………………A」

「連れて来てくれてありがとう!お兄ちゃん大好き!」


何故、こんなことに。
何故自分は上司に、(アヅマ)さんに、お兄ちゃんだなんて呼ばれて、満面の笑みを向けられているのか。



それは、丁度一日前に遡る。









「東都プリンスホテルのスイーツビュッフェですか」

「ああ。明日の昼、奴はそこに現れる」


薄暗い地下駐車場。シェードで窓を覆った後部座席から、上司である降谷さんがスマホをこちらに手渡した。

その画面には、都内にある高級ホテル内のレストランの案内が。高級感溢れるサイトに、カラフルなスイーツの写真が並んでいる。


「奴の愛人との連絡履歴を漁ったんだ。間違いない」


“奴“とは今回の仕事のターゲット。
日本で銃の密輸と販売を行う、違法な裏組織。そこを束ねていると公安が疑っている男だ。


「知ってはいるだろうが、もう何度も奴には尾行を撒かれている。僕は明日別の仕事があるから、誠に…不本意ながら……君と(アヅマ)に客として潜入してもらいたい」


ああ、めちゃくちゃ行きたかったんだなこの人。


「不本意……?あ、降谷もスイーツ食べたかったんだ。可哀想」


斜め後ろの後部座席、降谷さんの隣で黙って話を聞いていた(アヅマ)さんが、“ははーん“といった顔でニヤリと笑った。

しかしそれは見当違い。彼はあくまで“(アヅマ)さんと“行きたかったのだろう。本人も、訂正することはないが。


「……そこでだ。いかに自然に、客に紛れ込むかが重要となってくる。分かるな?」


つまり、恋人のフリをしろということか。
正直(アヅマ)さんの恋人役が降谷さん以外に務まるとは思えない。(黙っていれば)可憐で美人な彼女の隣に、こんな自分が立つだけでも恐れ多いというのに。

しかし任務ならば、やり遂げるまで……




「……兄妹(きょうだい)だ。
明日だけ君達は、兄妹だ!!」

風見の苦悩:再 第二話→←愉快大作戦 第七話



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えるみ(プロフ) - chiさん» コメントありがとうございます〜っ!!私も早く引っ付けたいです🥰少しずつ更新していきますのでぜひ読んでくださいね! (2022年7月16日 18時) (レス) id: 5298c64629 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - 想いあってるのに引っ付かないのもどかしくて切ない(T^T)更新楽しみにしてます♡♡ (2022年7月15日 22時) (レス) @page39 id: fa74c912f5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えるみ | 作成日時:2022年6月11日 13時

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