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きっと心底楽しんでる ページ6

「それじゃASMRからやってこっか。はーい、右ぃ〜左ぃ〜、みんなイヤホンの向きは逆じゃない?」

年上の優しいお姉さんキャラと無邪気な同級生両方の素質を合わせたような声で、伊瀬谷が耳元でささやく。

『惚れた』『優しいお姉さんみたいな声出さないで』『やめろ、伊瀬谷のお姉さんボイスは俺に効く』


スリスリと少し乾燥した音を立てながらマイクの耳を擦っては、柔らかく息を吹き掛ける。


「最近聞いたシチュボはねー、よっちん…吉野裕行のやつ。妙に寝れない時は普通のASMRよりシチュボのが寝れるんだけど、多分人の声が安心するんだろうね。
ほら、私ってあんな感じの声好きだし。」

わざと溜めて言えば、耳と腰と心を擽られた人物たちよコメントで溢れかえる。

『伊瀬谷さん吉野さんが好きなんですか!!!???止めてください私のことしかみないでください!!!!!』『溜めて好きっていうのはずるい』『テクニックがプロ』『吉野配信見に来い』

それを楽しげに目を細めて見ては、ふふっと笑った。

「ただあれさー?よっちんのリップ音が下手すぎてその度笑っちゃって。」

クツクツと声を殺すように笑うと、少し溜めてからチュッと音を鳴らした。その後短く息を吹き掛けて口を離す。

「どう?」

『腰砕けた』『俺の腰とさよならバイバイ』『リップ音上手い!!えっちだ!!!』

今伊瀬谷が使っているマイクは大層質の良いもので、余りの温室の良さに、音から質感だけでなく温度まで感じとることができる。
この配信を聞いているリスナー、及びファンたちは、実際に耳元で一連の行為が行われているのと大差ない感覚を味わっているのだ。


「あ、そういやみんな音量どれくらい?」

思い出したかのように伊瀬谷が声を掛けた。
先程までとは違い斜め後ろからする声は、まるで彼女と会話している感覚すら覚えることだろう。

こういうのって音量あげた方がいい感じに聞こえるらしいよ。
伊瀬谷の親切な言葉に、配信という壁を挟んで聞いているリスナーたちは大人しく従う。
幾分か無邪気な声を出していたからだろう。ただの純粋なアドバイスに感じた彼らは、1つ2つと上げていった。

その間に手にクリームをつけてゆっくりと耳を撫でる。湿度を含んだ音が彼らの両耳から聞こえ始めたその瞬間、低くカサつきのある声が脳に響いた。

「どうなるかっていうと…重低音が脳に響く」

持て余すと変なところに費やす(余った分なので短い)→←気安い奴らと自由人



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作者名:志賀 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=sab  
作成日時:2023年3月27日 18時

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