伊瀬谷！！！！俺だ！！！！ (ページ42)

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〃③ ページ42

「あ、どうも皆さん。改めまして濱健人です。」

　濵がカメラに向かって挨拶をすると、チャット欄が少しずつ賑わっていく。
　年に一度か二度しかないYouTubeの生配信で濱健人がやってくるという伊瀬谷のファンが歓喜する状態に遭遇しただけでなく、伊瀬谷が気ままなことを始めたのだ。
　伊瀬谷が濱相手に勝手気儘に何かをする場面を見たことが無かった彼らは、投げ銭をしつつ大いに盛り上がっていった。

「アイツが帰ってくるまでの間場を繋ぐことになったんですけど、多分ちょっと時間掛かるんですよね。どうしたらいいんですかね、これ。」

　自身の置かれた状況に困惑しつつも配信を進めようとコメントに目を通すと、スーパーチャットに書かれた言葉に視線をテーブルに移した。

「『伊瀬谷スマホ置いてってる。』あ、ほんとだ。
　まぁ要らないと思うし無くても大丈夫だろうけど、Aがスマホ持っていかないの珍しいな…。

　えっと？『濱さんAちゃんのスマホ開けるの？』開けます、パスワード変わってなければ。」

　スーパーチャットを中心にコメントを広い、テーブルに置かれた伊瀬谷のスマホに手をのばす。
　すぐに開けるよう伊瀬谷は指紋認証でのロックの解除を基本としているが、思ったように認証をしてくれない時などはパスワードを入力している。
　何年か前にはパターン認証を導入していたが、フィルムについた跡で濵にパターンがバレで1ヶ月で辞めた過去を持っており、パスワードにした今も毎度パスワードを破られていた。

「お、開いた開いた。
　ていうかこん中にアプリ入ってる入ってるだろうしそれで聞かせれば良かったな…。」

「『アプリってなんの？？』アイツドラマCDとかシチュボとかが聞けるアプリ入れてて多分そこに俺のやつ入ってるんですよねぇ。
　そう、アイツ俺のやつ買ってるんですよ。他の人のやつもあるけど。」

「あれ、入ってない。
　…入ってるのサブのスマホか。」

「Aちゃんがかえってきたぞーー」

「Aー、サブのスマホどこにある？」

「ポケットに入ってるけど──てか、勝手に人のスマホ開けんな。」

　部屋に戻るなり視界に飛び込んだ光景に伊瀬谷は一先ず突っ込みを入れた。幾度となく繰り返されすっかり慣れてしまった感覚ではあるが、側にいるこの男の行動はあと一歩で犯罪の領域に入ってしまう。彼女は自分の親戚が自分に対する言動で逮捕されることだけは阻止したかった。