気安い奴らと自由人 ページ5
某日、ツイキ○スにて
『寝れない、伊瀬谷子守唄歌って。』
「私はお前のベビーシッターじゃねぇぞ。…とはいえ優しいから伊瀬谷ちゃん歌ってやるよ、咽び泣いて喜べ。
"Rock-a-bye baby,
on the treetop,
When the wind blows,
the cradle will…」
『ふざけんなマザーグースじゃねぇか』『マザーグースやめろ』『寝れなくなっちゃうだろ』『もっと他の人のこと考えて』
時刻は0時を回った深夜、そこそこいい値段のするマンションの一室で、配信が行われていた。
透き通った美しい歌声とは裏腹に、子供が聞けばトラウマになると大評判のマザーグースの子守唄。
「しぬほど不評でウケる」
素早く流れていくコメントたちを目で追いながら、枠主である彼女はケラケラと楽しそうに笑った。目の下には若干の隈が見える。
『ウケるな』『まじで性格悪いなこいつ』『伊瀬谷を信じた俺たちの敗北』
リスナーたちは口々に不平不満を垂れ流した。
こんなにもファンから軽口を叩かれる声優は彼女くらいなものだが、それはファンから伊瀬谷への愛があってこそ。愛はあるが如何せん伊瀬谷からの愛情が歪んでいた。
『伊瀬谷シチュボ言って』
いくつもの不満のコメントに紛れて、1つのリクエストが投げられた。
それを見ると、伊瀬谷は椅子を回転させ、インターフェースにコードを繋ぐ。
『伊瀬谷ちゃん最近聞いてるシチュボ何?』『いせやんasmrやって』
またもやリクエストがコメント欄に流れる。
もっとも、今でも尚9割は伊瀬谷に対する不安のコメントである。
「え〜〜〜〜〜???ダミヘはあるよ、逆にいうとダミヘしかない。3つの要望をまとめて解消してやろう、偉大な伊瀬谷A様に感謝しな。」
『こいつ今日めちゃくちゃ態度デカイな』『さては徹夜だな』『伊瀬谷♡踏んで♡』『深夜テンションの俺ら』
コメントを横目で見つつ、カチカチとマウスを動かし、そしてカラカラと音を立ててた。
「んー?徹夜したよー?ここ一週間毎日徹夜。」
離れたところから移動させたダミーヘッドマイクの耳に。ふっと柔らかく息を吹き掛けて囁く。
さわさわと両方の耳を撫で、その間にコメントを眺める。
『急に耳元で喋らないで』『声良すぎでビビった、声優みたいだ』『息遣いがプロの方』『声優さんみたい』
「声優さんなんですけど。」
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作者名:志賀 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=sab
作成日時:2023年3月27日 18時