ファンレター ページ32
どうしようもない程に貴方を想っています。
何か考える度、些細な事で頭が貴方で埋め尽くされてしまいます。
じわじわと身体を作り替えられているかのようなこの感覚が、酷く気味が悪くも感じます。
けれども、やはり貴方を想う事が辞められません。
同じだけの気持ちを返してほしいとは言いません。ですがどうが、私が貴方に向けるこの感情を、どうか拒絶しないで頂きたいのです。
貴方を想う私という存在を、どうか否定しないでほしいのです。
貴方の幸せを、心から願っております。
いつか貴方が、誰かと幸せになることを恐れない日が来たのなら。
いつか貴方が、誰かに幸せにされることを拒絶しない日が来たのなら。
そうすれば、私はこの気持ちを片付けましょう。
好きという感情を消すことは今は到底出来そうにもありませんが、その時がくればきっと、きっとその頃には、私は貴方を諦められることでしょう。
貴方という存在に恋い焦がれる自分を、殺すことができるでしょう。
ですのでどうか、そう遠くない未來で、貴方に幸せになって頂きたいのです。
「この間さ、ファンレターの中に混ざってファンレターっぽくない手紙が入ってたんだよね。多分括りとしてファンレターなんだけど」
ボツりと呟くと、生放送ということもあり即座にそれに対する反応がコメントとして返ってくる。
「『何?下ネタ?』いや、そういうのはラジオだけ。あとセクハラでもない。『ガチ恋レター?』あー…まぁ、そんな感じなのかなぁ」
背もたれに体重を掛け、ギィギィと音を立ててぐるりと回った。一周するつもりが勢いが思っていたよりも強く一週と少ししてしまった為状態を左右に動かし正面に戻す。腹筋を鍛えていてよかったなと思わされる数少ない場面だ。
「全然嫌な内容じゃなかったよ。もしかしたら人によっては嫌…というか、複雑?になる人いるかもしれないけど、私は別になんとも思わなかったな。
嫌とも嬉しいともなんともなかっな、ふーんって感じ。
アレを見て、受け取って、何か思いが芽生えたほうがよかったんだろうなぁ…でもなぁ…私は告白されても「で?なに?どうしたいの?」って返す人間だし…
けどまぁ、あの言葉は嬉しかったな。嬉しかった?いや違うな…あれだ、悪い気はしなかった。」
どんな内容だったのか、誰からきたのか、本当にファンレターで貰ったのかなど。様々な疑問質問がコメント欄に飛び交っているが、答える気は更々ないのでテキトウなことを口にしながら眺めた。
57人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:志賀 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=sab
作成日時:2023年3月27日 18時