本人達が満足してればハッピーエンド ページ4
《ずっと、ずっと君の事知ってた。きっと君は私のことなんか知らなかったと思う。ううん…知ってても、ただ"知ってる"だけ。
でもそれでいい。それでよかった。でも、でももし、もしかしたら君が私を覚えてるかもしれないって…あの一瞬が、君の中にあるなら…
これ以上に嬉しいことは、無いと思う…
ごめんね、健人くん。そうだね…君の言った通り、君の事なんて…忘れるべきだったね…》
《…いい加減名前でよんで欲しい?
あー…いや…うん。
あのね、濱。実は私、好きな人がいるんだ。
…違う、好きだった人が、いた。
その人がね、お前とおんなじ名前なんだ。
…うん、そう。
好きな人に…好きだった人に、濱の事を重ねてた。初めは似てる部分が憎くて仕方なかったけど、でも、お前らが余りにも似てなくて…
だからね、なんか…愛おしくなっちゃった》
《え?健人のこと?好きだよ、好き。
…隣のクラスの田中?うん、好きだよ。
"みんな"好きだよ。》
「え、ごめん。これ誰選んでも攻略無理じゃね??」
『シークレットプリンセス〜貴方だけのヒロイン〜』のプレイ配信が5回目となった今、俺は全員のエンディングを順番に見ていた。
しかしどういうことなのだろうか。好感度がMAXで、ステータスも十分で、イベントもすべて回収しているはずなのに誰とも付き合うことにならない。
「バグか????」
バグなんてことない。わかってる。
これは間違いなく正解だ。間違いなく、これがTRUEENDだ。
TRUEEND、「正しい最後」「幸せな最後」。それがこのエンディングなのだろう。いかにも伊瀬谷Aが作りそうなシナリオで吐き気すら覚える。
「これどーする、BADEND回収する?そっちなら付き合えるけど」
【いいメリバ】【メリバ書かせたら右に出る者はいないとされているだけある】【ずっと泣いてる】【切なさと悲しさと嬉しさ】【BADENDで付き合えるのいい性格してる】【BADENDとTRUEENDが逆なんだよなぁ】【BADENDで付き合えるって確証持ってる濱健人、""理解""をしてるんだよなぁ】
カチカチと音を立て、幾つか前の分岐点へ戻り選択肢を変えていく。
段々と表情を変えていくヒロインたちを眺めていると、やはり脳裏に制作者の顔が浮かんで仕方がない。よくもこんな酷いゲーム作れたもんだな。
ゲームの中でなら、ゲームの中のお前なら、難しいことは何も考えずにただ愛せると思っていたのにな。そんな俺の考えを見透かされているようで、少し虚しくなった。
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作者名:志賀 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=sab
作成日時:2023年3月27日 18時