過去10話 ページ19
雲が流れている。今が幸せだと伝えんばかりの快晴に。
真昼「グレン。」
可愛らしいその少女が、風になびかれた髪を避けるように横目にグレンを見る。
起き上がった真昼のそばに寄り添うように、名前を呼ばれたグレンも起き上がった。
グレン「うん?」
グレンを見て赤く染まっていたはずの真昼の頬は、いつの間にか、風に熱を奪われたように白く戻っている。
真昼「あの…私たちさ…
大人になったら…結婚できるかな…?」
体を起こした二人は、もう空を見上げない。
重なった手のひらから幸せが零れ落ちるのを必死にくい止めるように、真昼は言葉を紡いだ。
真昼「今みたいにさ、ずっと一緒にいられるのかな?」
真昼の願うようなその声に、グレンは本当は気が付いていた。
めぐみが前より、自分の元で長居をしなくなったこと。
真昼が前より、早く帰ること。
そして今日は、いつも自分と真昼を残して帰ってしまうめぐみが、ギリギリの見えないところに隠れ、気配を消していること。
グレン「無理だよ。」
グレンの冷静な声に、真昼の肩がびくりと跳ねる。
最後だと、悟ってしまった。だから自分は、真昼にはもう縋れない。
真昼にも、自分を縋らせてはいけない。
グレン「…僕は分家の一瀬家。そしておまえは本家の柊家。それも当主候補だ。とても釣り合わないよ。」
真昼「でも!そんなの関係…」
グレン「あるよ。」
自分の声を遮ってきたグレンの言葉が、やけに胸に刺さる。本当はわかっているのだ。彼の言うことが正しくて、自分の言うことはただの戯言だと。
それでも、真昼は受け止めることができなかった。こんなにも好きなのに、ただ隣にいてほしいだけなのに、何故。
真昼は無意識のうちに、グレンの右手を両手で握りしめていた。
その体が震えていたことを、グレンはこの先忘れることはない。
幼い二人を待ち受けるのは、ただ残酷な別れだけだった。
グレン「!!」
グレンの左薬指に、かすり傷がつく。それに気が付くと、グレンはすぐさま一方を見つめた。
「いたぞ!」
「真昼様だ!また一瀬家のガキが真昼様を連れ出したのか!」
二人の目が、複数の黒服を捉えた。
グレン「めぐみのおかげで多少早く気がつけたな…。真昼、お迎えだ。」
真昼「私…グレンと離れたくないよ。私…」
ガッ!!!!!!!!!!!
鈍い音とともに、少年はいとも簡単に倒れる。
大の大人が手加減をしないのは、彼が一瀬の人間だから。
薄れゆく意識を無理矢理つなぎとめ、グレンは真昼を見た。
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美桜(プロフ) - 深夜夢で1番好きです(^^)更新しず〜っと待ってます(TT)♡ (2022年8月11日 23時) (レス) @page23 id: 73811d8464 (このIDを非表示/違反報告)
つっきー(プロフ) - 見てきた終わりのセラフの夢小説で一番好きな作品です。また主様が書き始めることを楽しみに待っています。 (2022年7月18日 1時) (レス) id: 00ad156d2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 私、この小説が大好きで何回も読み返しています!!私は、この小説を愛していきます!これからも体に気をつけて頑張って下さい!応援しています!! (2020年5月14日 20時) (レス) id: 698341d95b (このIDを非表示/違反報告)
Kamiya Kaji725 - この作品大好きです!私のハートズドンされちゃいましたよー笑笑。深夜大好きなんです!!深夜と夢主ちゃんの絡みが……かわいい!更新頑張ってください!応援してます!! (2018年2月15日 18時) (レス) id: e7cf133723 (このIDを非表示/違反報告)
伊坂紅(プロフ) - 過眠さん» ありがとうございます(^^)なかなか更新できずすみません!!私はそのままくろべにって読んでます…そのままですみません( .. ) (2018年1月17日 17時) (レス) id: bdcb2a452e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊坂紅 | 作成日時:2017年10月14日 20時