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ショコラの髪質の良い頭を上から下へ、優しく整えるように撫でる。
まぁこれも全てキスしたい衝動を抑えるためなのだが。
「……ふぁ〜あ…。じゃあ、俺そろそろ寝るわ。」
「えっ？もう？早いよ〜」
「俺は良いけどな、ショコラは女だろ。夜更かしは健康にも美容にも良くねーぞ」
ピンッとショコラの額をその白く長い指で弾き、悪戯っぽくニヤリと笑うと、その場から逃げるようにさっさと歩いていくナハト。
いつもの悪戯っぽい笑顔には変わりないのだが、キスしているのを我慢しているせいか、色気混じりの熱の籠ったナハトの瞳を思い出してショコラは少し顔を赤くした。
一方ナハトはと言うと、青白く輝く月と星々を背に、魔法を使っていた。
「最近ショコラと過ごしてばっかで練習してないし…、頑張らないと」
腐るほど読んで覚えた複雑な魔法陣を地面に描き、思ったものが出てくるよう魔法を使う。
が、調整が難しく、つい力んで魔法陣を描いた地面ごと小さい爆発を起こしてしまった。その勢いで吹っ飛んだナハトは木に勢いよくぶつかった。
「いって…」
思い切りゴチンと木にぶつけた後頭部を押さえながら起き上がる。痛いなんてものではない。
じんじんと傷んで止まない頭と、いつまで経っても魔法が上手くならない自分に苛々してぐしゃぐしゃと頭を掻きむしる。こんなことしたってどうにもならないのは解っているのだが。
ショコラがキスをしてくれるまで、少し会う時間を短くしようか。
分かっていたじゃないか。自分の中に魔法の才能なんてないって。努力だけが武器なんだ。
そう考えれば考える程苛立ちが増す。
「あぁっ、もう……！くそ…！」
はぁ、と短い溜め息をつくと、さっさと部屋へ戻り出した。
歩いているだけでも苛立ちが分かるほど。
大股で、速く、足音を立てて、拳を握って。生憎部屋に戻るまで会う人は居なかったのでそんな彼に気付く事もないのだが。
彼の消し忘れた魔方陣は、バラバラのまま夜空の光に照らされていた。
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