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「ふーん、流星群か。」
テーブルに頬杖をついてナハトは9割興味無さげに呟いた。いや、興味無さげ、と言うか、『嫌だ』という感じなのだが。星にすがって願っていたいつかの自分を思い出して、腹の底がぐちゃぐちゃになりそうな気持ち悪さが込み上げる。
「………………………………」
「ナ、ナハト、大丈夫？」
「ああ、平気。俺はいいよ。ショコラが行きたいなら喜んで行く」
幸せそうに微笑んで、キスする代わりに頭を撫でた。
キスしたい衝動をぐっと飲み込んで、キスしないように頬杖している手を口元に当てた。
まるで禁断症状かの様にキスしたくなる。我慢しきれるか、我慢出来ないで自分からするかのどちらかだろう。
そんなこと知らないとでも言うように時計の針は回っていった。
今夜は快晴で、雲ひとつない夜空の中、星だけがその光を見せている。
「俺の名前、ナハト…っていうじゃん」
「うん、カッコいい名前！」
「ナハトは……、“夜”って意味で、モーントズィッヒェルは……“三日月”。こんな夜空が見れるんだったら、どうせなら星って意味が良かったな」
「…けど、今日は三日月だよ！み、三日月の夜、カッコいいんじゃないかな！」
「そうだな、ありがと」
励ますように言ったショコラに笑いかけて空を見上げる。
すると、一瞬、キラリと光るものが夜空を駆けた。
「わぁッ、すごい！」
「おー。」
「…ねぇナハト、流星に願い事すると、叶うらしいよ！やってみようよ！」
「そーだな」
幾ら願ったって叶えてくれやしないのに。
そんな思いを飲み込んで、可愛らしい無邪気な笑みを浮かべたショコラを撫でる。
「何お願いした？」
と、子供のように聞いてくるショコラ。
ナハトは目を綴じて答えた。
「………強くなれますように。………って」
その時のナハトの笑みが、厭に悲しそうで、言葉に沈んだ思いがあるのが読み取れた。
ショコラは今も強いよ、と笑ったが、ナハトの悲しくも優しい笑顔に飲み込まれて消えていった。
「あ、もうひとつある」
「え、なになにー？」
と、ナハトはショコラの腰を掴んで自分の方へ引き寄せた。
すると、静かに、低い声で囁いた。
「ショコラからキスして貰えますように。…って」
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