(3) ページ28
.
「…キ………….....、」
箒に乗って居なくなったショコラの方を呆然と見詰めながら、ナハトはポスンと地面に座り込んだ。ナハトの表情と言えば、目を見開いて口をぽかんとして、見れば見るほど阿呆面である。暫くするとかぁっと林檎の様に赤くなり、湯気が出るほど熱くした。ショコラが居なくて良かったとつくづく思うのだが。
「なんっだあれ……、可愛すぎだろ」
相変わらず、自分でも気持ち悪いくらいショコラが好きなのだが、ショコラにキスする事に抵抗は無くてもショコラからキスされる事には耐性を持っていないらしく、影が彼にくっついたかのように動けなかった。
……でも口にはしてもらえなかったな………、簡単にはしてもらえないか。
何だか悔しいような、愛しいような。
「………なら、ショコラからキスさせてやる。ショコラから口にキスされるまでキスしてやんない」
意地悪な笑顔を浮かべて朝焼けに宣戦布告した。こうしてショコラによって(本人が知らぬまま勝手な)闘争心に火が付いたナハトは、太陽を睨み付けて寮に戻っていった。
暫く経ち、赤と青が混ざりあっていた空が雲ひとつない快晴の水色に変わった頃、学園の朝は始まる。学園中に響く鐘の音をぼんやり聞き流しながらナハトはダルそうに歩いていた。
ショコラに会うと、今朝の事を思い出して少し恥ずかしくなったが、上手く隠した。
ショコラは気にせず今日あった面白い出来事やスノーとの話を楽しそうにした。ナハトはそれを優しげな顔で見るのと同時に、ショコラと仲が良いスノーへ若干の嫉妬をしていた。
「………ふーん。そんなにスノーと仲良いんだ……？」
「うん！お姉さんみたいな感じかなぁ…！」
「そうじゃなくてさ……、けっこー嫉妬してるんだけど…」
「スノーと仲良いから？」
「うん。…まぁショコラの交遊関係に口出すつもり無いけど…ショコラは俺のなんだから、自覚してよね」
執念深くてすぐ気に入ったモノを自分のものにして離さないめんどくさい性格なのは自分でも分かってる。でもショコラなら許してくれるかなと思ってしまうのだ。
不意に少し寂しくなって、ショコラが自分のものだという事を確かめたくなったナハトは静かにゆっくり、確かめるようなキスを――――――…、
しようとした。
「……やっぱやめた」
「えっ、今の恥ずかしい…！」
「キスしないって決めたんだから。ショコラからココにしてくれるまで」
ナハトは自分の唇を指差してニヤ、と怪しげに笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
