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「ショコラ、こっち来い」
変わらず少々荒い言葉遣いで、でも優しくショコラを呼ぶ。ショコラがナハトの元に歩いて行くと、不意に腕を掴まれてガクンと躓いた。
それを分かっていたように、ナハトはショコラを受け止めてぎゅっと優しく抱き締める。
「ナハトさん…?」
「俺、ショコラが傷付くのが怖いんだよ。今まで生きてきた中で、何よりも」
不安げな声で話すナハト。
自分を抱き締める手が震えている事に気が付いたショコラは、大丈夫、と撫でるように背中に手を回した。
「…ショコラ、好きだ」
自分が思っていたより、するりと口から出た言葉。頭にのしかかった重りがすとんと落ちたように軽くなった心。
先程までの憂鬱も、苛立ちも。全部全部がなくなったようで。
「今すぐ返事をくれとか…こんな俺を愛してくれなんて言わない。でも、ショコラが俺を好きになってくれるなら、それを神様が許してくれるなら」
神様なんて大っ嫌いなのに、何言ってんだ俺。
そう思いながら腕の中にいるショコラの体温を噛み締める。
「俺の…恋人になってくれますか」
こちらを見て優しく微笑むショコラ。
さらさらの白い髪も、今俺だけを見てくれている青い瞳も、柔らかい肌も、頭のてっぺんからつま先まで、全部俺のモノにしたい。
ナハトの頭を駆け巡って侵食する独占欲は、ただ真っ直ぐショコラへと向く。
赤い瞳を正反対の青い瞳に向けて、返答を待つ。
yesかnoの簡単な2択。出てくるまでが最難関の複雑な回路。例え叶ったとして、大っぴらには出来ない秘密の恋。
その歯車は、『今』。ショコラが口を開いたその瞬間から始まる。
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