5,【 bitter sweet kiss. 】 ページ19
,
早足で去っていくナハトの背中を見詰めるショコラ。
「……これじゃ、前と同じじゃん…。変わらないじゃん……。」
動揺で揺れた青い瞳。
それでも、震える脚を無理矢理動かす。
前の様に、座り込んで泣いてなんて居られない。
正直、怖くないと言ったら、嘘になる。
本当は、怖くて仕方ない。
でも。
それでも。
キスの意味を知りたかった。
嫌いの真意を聞きたかった。
「(……触れられたところが熱い…。)」
ナハトが触れた手に自分の手を重ねてみる。
まだ、彼の体温は残っているのに、彼の姿が見えないのが切なくて、もどかしくて仕方なくなる。
ショコラは走り出した。
しかし、周りにはナハトの姿は見えない。
もう先に行ってしまった様だ。
しばらく探し回るが、なかなか姿は見えない。
それでも、ナハトを探すのをショコラは止めなかった。
それでも、見付からずにどうしたら良いのか、分からなくなった時。
階段の踊り場にある、立派な額縁に飾られた、絵の中の女性と目が合った気がした。
そんなはずはないのに。
優しげに笑う女性。
その女性の手をとり、手の甲にキスをする男性。
2人の世界が描かれていた。
「(…あっ…!)」
キスしている絵を見て、ショコラは思い出し、目を見開いた。
"キスの意味"
男性からのキスには、する体の部分によって、意味があるらしい。
絶対に合ってるとは言えない。
しかし、可能性にすがるのは悪くないと思えた。
確か、腕へのキスの意味は………
「………恋慕……。」
ショコラは呟いて、再び走り出す。
2人が初めて出会った、否、出会うことが出来た、あの場所に。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ