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ショコラがナハトの目の前を通る少し前、ショコラは箒を使って登った、学園の屋根の上で小さな鳥と戯れていた。
すると、急に小鳥が怯えたように鳴き、バサバサと羽を動かし、急いで去っていってしまった。
「(…？急にどうしたんだろう？)」
ショコラは気になって、下に降りてみることにした。
動物は生まれつき、野生の本能が備わっているため、微細な振動や音には特に敏感だ。
そんなことを先生が話してたな、とショコラは考えながら箒に座り、静かに下に降りていく。
下には特に異変はない。
いつもの中庭だ。
「(気のせい……？)」
ショコラは少しだけ怖くなって、別の場所に行こうとした。
しかし、それを制止したのは、紅い瞳の彼だった。
偶然、ショコラが目の前を通った時に、この前に会った吸血鬼、ナハトと目が合った。
ショコラは驚き、ナハトは嫌そうに溜め息を吐いた。
「……はぁ。…何でアンタがここに居るんだよ…。」
少しだけ怒ったような、呆れたような、キツい言葉遣いでナハトがショコラに問いかけた。
「…ひぃ…！…こ、こんばんは。ご、ごめんなさい！ちょっと気になることがあるので…。」
ショコラは怖がってもう涙目だ。
「何で俺が話しかけただけで涙目なんだよ。」
「ご、ごめんなさい…？」
イラついているナハトに、謝るところではないのか、よく分からないまま、ショコラは謝った。
「謝んなくていい。こんな時間に、アンタは何しに来たんだよ。校則違反だぞ？」
「私は、ちょっと、……散歩に。…それに、ナハトさんも校則違反じゃないですか。」
ナハトがジトーっとショコラを見つめて言った。
ショコラの返事の最後の方はショコラにしては、珍しく反抗的だった。
「散歩、嘘？」
何もかもを見透かしたような瞳でナハトが問う。
諦めて正直にショコラが話す。
「……はぁ。ただの興味本意です。この前、図書室で古代魔法の本を読んだんです。その本には、『紅い月の晩には魔力量が上がる魔法使いが多い。その中でも、稀に魔力量が普段よりも大幅に上がる者もいる。しかし、魔力量が上がり過ぎ、魔力を抑えられずに暴走してしまう魔法使いもいる。』って書いてあったの。」
ナハトはその話を聞き、しばらく考えているような表情を浮かべた。
その間もショコラは話し続けていた。
「で、実際はどうなのかなって思って来たんだけど、魔力量が上がった気はしないなぁ。やっぱり、古い本だし、迷信かな。」
ショコラは残念そうにそう言った。
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