1,【ラミアは白い華に牙を剥く】 ページ1
今日も夜が明け、朝がやって来る。暗い空はたちまち明るくなり、太陽の光が世界を照らした。
一点の曇もなく青空が広がり、そこに
とても気持ちの良い朝だと言うのに、
彼の名前はナハト＝モーントズィッヒェル。その尖った牙や白い肌から、吸血鬼やヴァンパイアと呼ばれる青年である。
どうやら、日光も苦手なようだ。
埃、シワひとつ無いケーブを身に纏い、ナハトは生徒達の人混みに紛れ込んだ。
その顔は馬鹿でも解るほど嫌そうで、酷く顔を歪めていた。朝の祈りの時間が始まり、生徒達はロザリオを手に神への祈りを捧げる。
「(何が神様だよ………本当だるい。これだから
ナハトは神の銅像をその赤い瞳でギロリと睨みつけた。
祈りが終わると、生徒達はそれぞれ教室へと向かっていく。ナハトは神に向かってか、それとも信じている生徒達に向かってか、あるいはどちらもか、「クソ野郎」と呟いた。
大きな欠伸をすると、ナハトは歩き出す。不意に、自分より小さいものにぶつかった。その時、足を踏まれた気もした。
ぶつかったものは人らしく、「きゃっ」と声を漏らして倒れてしまった。ナハトはそれを見て目を見開いた。
「あ……………、大丈夫？」
「あっ、ご、ごめんなさい」
少女は人見知りのようでわたわたと焦りながら謝る。直ぐに立とうとしたが、立つことは出来なかった。
ナハトはそれをただ上からジッと見ていた。そこにはなにかに対する敵意や嫌悪があった。当然少女はもっと焦る。
するとナハトは「はぁ」と溜息をつき、ぐんっと屈んだ。
「足、捻ったでしょ。嘘つきだね、大丈夫だなんて」
「…えっ？？」
予想と違った事を言われたのか、素っ頓狂な顔をする少女。ナハトはそれを見て、「幾ら吸血鬼って呼ばれててもとって喰いはしないよ」とまた溜息をついた。
内心、「ツイてない日だ」と思っていた。日光はギンギンだし、
「立てるの、アンタ」
「あっ、ハイ！」
でも無視してそのまま行くなんてことは出来なかった。心底自分の世話焼きな正確に嫌気が差す。
少女を立たせて、ナハトは少女の前に手を後ろにしてしゃがんだ。
「…えっ、あの…」
「生憎、オレ回復魔法を他人に使えないんだよね。魔力のせいで。悪化したら困るから、乗って」
振り返ることなく、素っ気なくナハトは言った。
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