死神志望でも恋はする。【３】

能力の秘密 ページ9

「……っはぁー！」

数十分、練習したあとで、やっと休憩に入る。

てか水飲みにくっ！

「羽波はどう？能力使えた？」

「………………まあ少し」

「……すげーな、流石だわ」

俺は全然。とため息をつく。

こんなんじゃ一級死神の資格はとれない。

絶対とるって決めたのに。

「なんか……いつもはスッて相手の頭の中に幻を刷り込めるんだけど……、『弾かれてる』感じなんだよな」

アゴに手を当て、考える。

「……なんで一ノ瀬って能力使うと目が赤くなるんだ？」

「ん？ああ、能力使うと目の色素が抜ける作用が出て、血の色が見えるようになるんだ。アルビノの人の目が赤いのは血の色だから」

自分の能力をしっかり考えたことはないが、大体のメカニズムはわかっている。

「もともと、ご先祖さんは『意志疎通させる』能力を使ってたらしいけど、それから派生したのが今の能力。」

「意志疎通………………」

「俺らの能力は、その意志が動画になって頭に流れてる様なもんなんだ。お陰で心同士で話すことは出来なくなったけど」

「…………じゃあ、伝えたい思いが強ければ強いほど、幻をみせられるってことか」

「……え」

はじめて聞く考えに、目を見開く。

「なに、もっかい言って」

「…だから……、伝えたいって思えば思うほど幻をみせやすい……ってことじゃないのか」

「…………そうか」

意志疎通から派生した今の能力だ、基本的な性質は変わっていないかも知れない。

意志疎通の能力は『伝えたい』と思わないと使えない能力だ、当たり前だ。

なら、俺も『みせたい幻』を強く思えば……。

「ありがとう羽波、なんかできる気がする」

「…………そうか、頑張れ」

もっかいやってみよう。

「先生、もっかいやろう」

「え？休まなくていいのか？」

「なんかやる気になったから。早く」

「お、おう」

フゥ―――、と長く息を吐く。

集中集中。

「んん"〜ッ」

幻をみせろ。

頑張れ俺。

まっすぐに伝える感覚を意識する。

「！ できた」

スパッと視界が開いたような感じがする。

霧が晴れたような。

「できたか？俺には分からんが」

「リンゴ浮いてません？」

「浮いてる」

「……！」

できた、できたできた！

「……っし！」

思わずガッツポーズをする。

「羽波！使えた！やったよ俺！」

「……よかったな…………」

今の感覚を覚えてれば、きっと、一級の資格も夢じゃない。

久しぶりに何かできたときの嬉しさと楽しさを感じた。

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