【盤上のラグナロク】BL△CK Out【派生作品】 (ページ14)

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　優勝は、当然ロキの率いる海賊チームだった。
　ロキは「楽しかったな」と子供の様に笑う。トールはロキを見ながら言った。
「そう言えば、賞金の100万円、どうするんですか？」
「100万円？ …ああ、100万円分のお菓子を買って配る」
　ロキは指で周囲を指した。そこでは、ゲームの実行委員会の男性達が、人々にお菓子を配っていた。そこでは、皆口々に「Trick or Treat」と口にしている。
　トールは不思議に思った。集めたお菓子をつまみながら街の様子を見ているロキに尋ねる。「先程ゲームが終わったばかりなのに、どうやってこんなに100万円分のお菓子を買ったんですか？」ロキも不思議そうに言う。
「先に買ってたに決まってるだろ？俺が優勝するに決まってるんだから、先に100万円分買っておいた。まぁ、俺が優勝してもしなくても配ったけどな」
　ロキの自信に感心しながらも、その100万円の使い道に、トールは微笑んだ。100万円で買ったのはお菓子だが、お菓子のお陰で街では笑顔で溢れている。
　ロキは、大量のお菓子の入った籠を持つ男性を見て、「俺達も手伝いに行こう」と言った。先に歩き出した我らが海賊王の背中を、トールも追いかけた。

「トリックオアトリート！」
　列の最後に並んでいた青年に最後のお菓子を渡す。広場には、すっかり人が居なくなっていた。配り終わったので一息ついていると、ロキが後ろから肩を組んできた。
「わ、ロキ様」
「そう言えばお前には言ってなかったと思ってな。Trick or Treat」
　トールはお菓子を探したが、出てきたのは少年から貰ったパンプキンのクッキーだ。人から貰ったものを人にあげるのは気が進まない。
「申し訳ありません、お菓子は今は…」
「知ってるよ、無くなったの見計らってきたんだから」
　ロキは悪戯っぽく笑う。
「お菓子を貰えないなら悪戯したって構わないだろ？ ──明日も明後日も、来週も、来月も──来年のハロウィンまで、お前に悪戯を仕掛けてやる事にしたから、楽しみにしてろよ」
　ロキは、開きかけたトールの口に棒付きキャンディを突っ込んで、無邪気に笑いながら逃げる様に走っていった。

　一人残されたトールは、ロキが行った方向を辿り始める。
　棒付きキャンディは、ラズベリー味だった。棒を摘んで口から出し、もう闇に溶け込んで消えた君主に向かって笑いかけた。

「悪戯なんて、昔から変わらずしてるのに。程々になさってくださいね」

「ジャック・オー・ランタンの探し物」