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ロキは、隣でお菓子を探しているトールに話し掛ける。青い目が、悪意でぎらりと光る。
「なぁ、トール。妙案を思い付いた。今よりもずっと早く、そして最も多くお菓子を集められる方法だ。きっと優勝できるに違いない」
トールの耳元に顔を寄せ、小さな声で思い付いた事を話す。すると、トールの眉は僅かにひくついた。トールはロキから顔を離すと、「大丈夫なんですか？ それ」と心配そうに言う。ロキはトールの顔を見てからかうように笑った。
「忘れたか？ 俺達は今、海賊なんだ。悪戯の一つや二つ、しておかないとな」
コートのポケットに手を入れながら怪しく笑う。
「悪戯道具なら、持ち合わせがあるからな」
ゲームが始まってから数時間。空はもう暗くなり始めている。
ロキとトールは、既に袋がいっぱいになるほどのお菓子を集めていた。キャンディ、チョコレート、ドーナツ、クッキー。甘い香りを漂わせ、次の獲物を探す。
次の獲物に決めたのは、ミイラ男に仮装している集団だった。ロキとトールは顔を見合わせると、早速彼らに声をかけた。
「こんにちは。Trick or Treat！」
「ご機嫌よう、
ミイラ男達は、ロキを見て深々と頭を下げた。
「お菓子探し、退屈してないか？ もしそうなら、俺達とゲームしよう」
「…ゲーム？」
ロキは「ああ！」と明るく答える。
「これから30分間、お互いを脅かし合うんだ。どちらかが声を上げたら負け。負けた方は、持ってるお菓子を渡す。…どうだ？」
ロキは手に持った大量のお菓子を見せる。ミイラ男達は顔を見合わせると、「面白そうだ」と乗っかった。
確かに面白いかもしれない。──ロキとトールが相手でなければ。もしミイラ男達が、このお菓子達がこうしてもちかけたゲームで略奪したものだと知っていれば、乗らなかったはずである。
張り巡らせた罠へと自ら歩んでくるミイラ男達に、ロキはぺろりと舌なめずりをした。さて、こいつらをどう泣き叫ばせようか。
「わくわくするな」
そう言いながら笑うロキに、トールは軽く肩を竦めた。
ミイラ男達は、30分近く経っても驚かしに来ないロキ達に、戸惑っていた。彼らが何処にいるかも分からないので、驚かす事すらできない。周囲を探し回ったが、中々見付からない。
口々に愚痴をこぼし始めた、その時。それが、ロキ達の狙い目。
ゆるんだ心の隙間に、恐怖は忍び寄るのだ。
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