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【過去】
シェヴンは──生まれたその時、男だった。すぐに女性になる魔法をかけられたが、母の中にはシェヴンは男であるという事実が刻み込まれた。男性に嫌悪を抱いていた母は、男だったシェヴンを愛せなかった。眠るシェヴンの首を絞めようとした事もあった。このままではこの子を殺してしまう──だから、まだ幼い内に、孤児院へ預けた。
孤児院は非常に厳しい規則で縛られていた。毎日同じ時間に起き、皆同じ服を着、同じ食事を食べ、同じ勉強をし、同じ運動をする。中でも重んじられたのは、「平等」だった。院長は言った。「平等とは正義。平等こそ、生物の救い」シェヴンはそれを信じて疑わなかった。それしか知らなかったから。シェヴンは、狂ったように平等を守り続けた。
一方で、そのシェヴンを「気色が悪い」と虐める孤児もいた。仕方がなかった。食事の配膳の1gまで気にかけ、何かされたら平等に何か返す事を強要するシェヴンは、子供達にとって異質だったからだ。
シェヴンは、何故自分が虐められているのか分からなかった。ルールを守っているだけなのに、何故自分が虐められて、他の子達は仲良くしているのか。シェヴンは憎んだ。妬んだ。何故? 何故自分だけ愛されない? そんなの、そんなの不公平だ!!!
その時、シェヴンの中に「世界は不公平。だから平等こそが救いなのだ」という価値観が生まれた。不公平な世の中なのだから、せめて平等に愛されなくては、愛さなくては救われない。
平等に人を愛するにはどうすればいいだろうか。シェヴンは、魔法学校で生活する中で、一人の女性に恋をした。すると、彼女の良いところが溢れるように見えてくる。顔が美しい、髪が綺麗、いい香り、誰にでも慈悲深い、頭が良い、全てが──。
しかし、平等に愛したいシェヴンにとっては、それは障害でしかなかった。誰かを深く愛しては、平等に愛することができない。そして思いついた。誰かを愛した分だけ他の人も愛せばいい。誰かの良いところを、好きなところを見つけた分だけ、他の人の好きなところも見つければ良い。
すると、世界の全てが魅力的に感じた。惚れ惚れする程、美しく、儚く、可愛らしく、格好良く、強く、脆い。あぁ、なんて愛しい世界だろうか!
シェヴンは、この世の全てを愛した。人も、生き物も、植物も、建物も、不公平も不平等もなにもかも。──そう、“平等に”。
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