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時を戻せるならそうしただろう。どんな手を使ってでも。だってこんなのあんまりだ。
姉さんにとっては、僕の存在など取るに足らないのかも知れない。けれどこちらからすれば、小さい時から隣を歩いていた姉で、尊敬すべき人で、深く愛した人で、いつも心に住まわせていた人だった。姉さんのように思慮深い人になろうと思った。
いや、待て。いつから自分が隣を歩いていると思い込んだんだろう。きっと、僕が一方的にそう思い込んでいたのに違いない。実際は隣なんかじゃなくて、もっと遠い存在、もしかすると彼女の踏み台の一部だったかもしれない。
自分が心底馬鹿に思えて、笑い声を上げる。凡人とはきっとこういう事だ。自分で自分にほとほと呆れてしまった。「最悪じゃないか」
僕は鈴を鳴らしながら、黒い制服を纏ったその人型に、刀を上から下へと振り下ろした。
*
「おいシオ、聞こえてるのか？」
トーマンくんが僕の顔を覗き込む。
その手には、僕のストラップが握られていた。落としたのを拾ってくれたんだっけ。記憶と感傷にどっぷり肩まで浸かってしまっていた。「すみません、ぼーっとしてました」そう返して、感謝の言葉を伝えながらストラップを受け取った。
トーマンくんは「らしくないな」と何か怪しいものを見るような目で僕を見た。
「なんです？ そんなに僕の顔が見たいならもっと近くで見てもいいんですよ♡」
「言うと思ったよ人が心配してやってるのに」
「ふふ、心配なら無用です。少し自分の心を焚きつけていただけなので」
「焚きつける？」
才人になる夢のことです。そう付け足す。
「あぁ、シオは才人になりたいんだっけ。よく折れずに続けられるな」
「ええ。…猿でも人間になれたんだ、僕が才人になれない筈がないでしょう。僕は僕なりに、“正しい方法”で世界を変えるんです。僕は証明したいんですよ、他のやり方は間違ってるってね」
もう二度と、縛られたままで命が飛ばないよう。僕は才人になると、遠い昔に決めたのだ。そして、姉さんが間違っているという事を分からせてやる。
「そろそろ時間ですね。任務ですよトーマンくん。合同任務よろしくお願いしますね。トーマンくんと任務なんて浮かれてしまいます」
「俺は沈んでるけどな。最悪だ」
「おや、最高の間違いですよ」
僕は、手袋の端を引っ張って手袋を強く履き直した。
続く (更新停止中)
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