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「おっ、アッキーくん。アッキーくんもこの任務参加するのか」
「おや、カンちゃんさん。ご一緒できて嬉しい限りです。…まぁ、僕の能力があれば薬いらずですからね。こういう任務には大体参加させられます。向き不向きというものがありますし。僕はカンちゃんさんの能力が羨ましいですけどね」
「まっさか！ 思ってないの丸わかりー」
「ふふ、本音ですよ」
半分嘘だ。確かにカンちゃんさんの能力は羨ましいが、僕は僕以上にこの能力が合う人もいないと思っている。それもまた、向き不向きというやつなんだろう。
カンちゃんさんと会話交わしながら、刀の入ったカバーを肩にかける。刀の鍔に引っ掛けてあるストラップの鈴が、カバーの中でチリンと鳴った。
「さて、お仕事ですねぇ」
もう二度と人を傷付けぬと誓った手のひらに、黒い手袋を被せる。裾を引っ張って隙間なく履けば、キュ、と革と皮膚が擦れる音が聞こえた。
都市部から離れた人通りの少ない少し廃れた街。整備されていない凹凸の多い道を、音を立てずに走り抜ける。
建物と建物の隙間を横目で見た時映り込んだ黒い制服。紛れもなく、裏図書館協会の一部の組織、言ノ葉連合のものだ。
といっても、僕はあまり目にした事の無い制服だった。なんでも、裏図書館協会が弱体化した為に、それに伴って言ノ葉連合も弱体化したらしい。
情報を聞いた所、言ノ葉連合の構成員は能力を付与される。そう易々と出して
「お話を聞かせて欲しい、と頼んだだけなんですがねえ。分かりやすい人達だ」
一度追い掛けるのをやめ、後方から彼らの進行方向に回り込む。ここら一体の地図は頭に叩き込んである。
身体を半身にしながら細い裏路地を抜け、黒い制服を纏った構成員の一人を取り押さえる。
「鬼ごっこは終わりですよ、言ノ葉連合さん。これは本の入った鞄ですね？ あなたのお仲間は何処です？ 大人しくすれば痛い事はしませんよ──僕はね。…あぁ！ 顔を地面に押し付けられては喋れませんね！ 申し訳ありません！」
男性らしいその構成員に跨ったまま仰向けにさせ、頭を押さえる。土で汚れた顔が惨めさを際立てている。
極めて滑稽だ。あなたは文字を愛した人？ それとも、才に愛されなかった人？ 利己的に才能を突き放した人？ どれにしろ、そんな人間の顔が泥だらけになっているのは、なんだか可笑しかった。
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