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花の咲いた道にそって暫く歩くと、少しずつ建物や車が増えていく。中心街まで来ると、周囲には様々な頭の形をしたモストロでいっぱいだった。平日にも関わらず、市場は賑わいを見せている。
背後にいる3人に「はぐれないようにしろよ」と伝えて、モストロの間を掻き分けて進んでいく。買い物は、なるべく手早く済ませたい。
「この店が、いつも紅茶の茶葉買ってる店。バルカから来たって言えば、それ用の量の茶葉貰えるから。買ってきてくれるか?」
「わかったわ」
紅茶の茶葉に興味が無いらしいセオは、道端の石を蹴っている。ノアにマリエルの付き添いを頼み、セオと店の前で待つ。
セオは蛇の仮面の口を開くと、カイに話し掛けた。
「──ねぇにーちゃん、今日なんか元気無いねえ」
「…え?」
「今日は元気無いねえ、って言った。悪い夢でもみたの?」
…忘れてた。セオは他人の変化に敏感なのだ。自分が弱音を吐く夢──なんて、言えないが。弱音は吐かないとあの日決めた。
「ちょっとな、内容は忘れたんだけど胸糞悪くて」ちょっとした嘘を吐いて、仮面の内側から乾いた笑みを漏らす。セオは「ふーん」と興味なさげに返して、店から出てきた2人に目を向けた。
「…よし、暗くなる前に帰ろうか」
「あはは、オレ以外全員非力じゃんウケる。仕方ないから重いの持ってあげる〜」
野菜の入った紙袋を抱えて、オレンジに染まり始めた空の下を歩く。
3人の後ろ姿を見ながら、ぼんやりと夢の内容を思い出していた。『オレの弱音は何処に行くの?』思ったよりも幼くて情けないその声は、今にも消え入りそうだった。
消えるほど弱いなら消えてしまえ。
不意に、モストロとすれ違った。薔薇の頭の、モストロと。
すると、蓋をしていた記憶がまた頭に流れ込んでくる。弱音が、本音が雪崩込んでくる。本当は怖い、強くなんかない、皆を守れるわけが無い。オレは、いつだって約立たずだ!
「なんだ、オレの
──別に、自分を偽る為仮面をしてるのはオレだけじゃないだろ。
「? なんか言ったか」独り言が聞こえていたのか、ノアが振り向く。
上手くやれよ。弱さは優しさじゃない。強くて初めて優しくなれるんだ。優しくなろう、オレは皆の兄なんだから。いつも通り。誰にも悟られるな。苦しみ、悲しみ、苦しみ、葛藤全て。そう、その為の仮面だ。
カイは仮面の下で不敵に微笑むと言った。
「なんでもない」
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