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セオは玄関の側にある傘を二つ持って、外に出た。
マリエルはまだ目で見える遠さだ。セオは「マリエルちゃーん」と呼びながら彼女の背を追って走る。暫くするとマリエルはその声に気が付き、振り向いて止まった。
「忘れ物と、忘れ者。一人で行ったら怒られるよ、あと傘。ね！」
「あぁ、ありがとうセオ。考え事をしていたの、忘れていたわ。またカイお兄様達に怒られる所だったわね」
傘を片方受け取って、マリエルは笑った。
正確には顔が見えていないので、笑い声が聞こえた。
セオはマリエルの隣に並ぶ。こうして並ぶと、自分の頭の高さとマリエルの頭の高さの高低差に気が付く。彼女の歩幅に合わせ、小股で歩く。
傘を振り回しながら、マリエルに言う。
「また�爛▲ぅ弔薛瓩了�考えてたんだね。聞かせてよ」
仮面によってその表情は分からないが、その間で、マリエルがどんな顔をしているのか想像できた。「あなたにはわかってしまうのね」きっと、そんな顔。
「…15年前、奴らは現れたけど…一体どこから現れて、何故人間を襲うのか、全くもって分からないの。いくらなんでも、突然あんな完全生物みたいな生き物が生まれるなんて不自然よ」
「心優しくて理性的、頭も良くて力も強い。傷もすぐ治り、頭部は銃弾も跳ね返すほど強固。首から下は人間…一見ね。まぁこんな生き物、突然変異でも生まれないよねぇ」
歩いてゆけば見えてくるのは、皆が楽しそうに暮らしている賑やかな街。
そこには、十人十色の頭部をしたモストロ達が、買い物をしたり談笑したりしていた。
悠々と、怯えることもなく暮らしているモストロを見て、思わず傘を握っている手に力が入る。オレは、皆は、いつもお前たちに怯えて暮らしているのに。行きたい所も見たいものも、沢山あるのに。ミシ、と音が聞こえてから、セオは慌てて力を弱めた。
「壊れて、ない…よねぇ？」
「…大丈夫そう、ね…セオは大丈夫？」
「えぇー？ 大丈夫だよぉ、力の加減下手くそだからうっかりやっちゃっただけ」
仮面の下でにっこり笑って取り繕う。皆の思う�爛札�・クラーク�瓩箸脇叛衢澆龍�いいじめっ子であって、皆の自由がない事に対して怒ったりしない。だから、いつも通りに振る舞う。本当の自分は、自分だけが知っていれば良いのだ。
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