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「リユウちゃん? よろしく〜! オレ梅藤夏羅。仲良くしようね」
「………」
「あはは、ほらリユウちゃんも挨拶して?」

 天ちゃんの背中から顔を出す。
 ──見た事のある髪型と髪色だった。派手だから覚えている。あの日、使者団としてスーパーに入っていった人の1人だ。だけど、なんだか怖い。髪の毛ピンク色だし。
 それに人見知りも相まって、上手く言葉が出てこない。急いで返そうとすると、天ちゃんが笑って頭を撫でてくれた。

「大丈夫、よしよし。ちょっとずつ慣れてけばいいよ」
「…うん」

 天ちゃんの服の裾を掴む。天ちゃんがいるなら、きっと上手くやって行ける。
 天ちゃんは私の返事を聞いて「歓迎するよ。ようこそ使者団へ、リユウちゃん」ともう一度笑った。





 「ねぇ、大丈夫?」そう言って、天ちゃんは私の顔を覗き込んだ。
 今日は授業参観だった。授業に向けてやってくる保護者の中、天ちゃんは1人だけ若い。天ちゃんはもう私にとっては家族のようなものだし、天ちゃんからしてもきっとそう。だって、いつも外に出ない癖に、こういう時は来てくれる。

「いや、皆の親見てちょっと思い出してだけ」
「あ、そっか…大丈夫?」

 少し心配そうに眉を八の字にして、天ちゃんはもう1回聞いてきた。
 私は笑って返す。

「当たり前じゃん。私は世界一カッコイイ保護者を連れてきてんだからね」

 いつもだったら、こんな事は言わないけど。
 天ちゃんは目を見開くと、少し照れくさそうに「そっか」と言って優しく笑った。

「ほら、もう授業始まるよ。教室戻って」
「はいはい。あ、ちゃんと見ててね?」
「うん」

 使者団は、私の家。使者団にいる私は、本当の私。天ちゃんは、私にとっての特別な人。天ちゃんといる私は──きっと、未知の私だ。
 あなたと一緒にいる時が1番幸せだって事は、もう少し秘密にしておくんだ。




やさしくわらうひと

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作者名:くろせ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年4月26日 21時

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