ページ ページ5
.
「リユウちゃん? よろしく〜! オレ梅藤夏羅。仲良くしようね」
「………」
「あはは、ほらリユウちゃんも挨拶して?」
天ちゃんの背中から顔を出す。
──見た事のある髪型と髪色だった。派手だから覚えている。あの日、使者団としてスーパーに入っていった人の1人だ。だけど、なんだか怖い。髪の毛ピンク色だし。
それに人見知りも相まって、上手く言葉が出てこない。急いで返そうとすると、天ちゃんが笑って頭を撫でてくれた。
「大丈夫、よしよし。ちょっとずつ慣れてけばいいよ」
「…うん」
天ちゃんの服の裾を掴む。天ちゃんがいるなら、きっと上手くやって行ける。
天ちゃんは私の返事を聞いて「歓迎するよ。ようこそ使者団へ、リユウちゃん」ともう一度笑った。
*
「ねぇ、大丈夫?」そう言って、天ちゃんは私の顔を覗き込んだ。
今日は授業参観だった。授業に向けてやってくる保護者の中、天ちゃんは1人だけ若い。天ちゃんはもう私にとっては家族のようなものだし、天ちゃんからしてもきっとそう。だって、いつも外に出ない癖に、こういう時は来てくれる。
「いや、皆の親見てちょっと思い出してだけ」
「あ、そっか…大丈夫?」
少し心配そうに眉を八の字にして、天ちゃんはもう1回聞いてきた。
私は笑って返す。
「当たり前じゃん。私は世界一カッコイイ保護者を連れてきてんだからね」
いつもだったら、こんな事は言わないけど。
天ちゃんは目を見開くと、少し照れくさそうに「そっか」と言って優しく笑った。
「ほら、もう授業始まるよ。教室戻って」
「はいはい。あ、ちゃんと見ててね?」
「うん」
使者団は、私の家。使者団にいる私は、本当の私。天ちゃんは、私にとっての特別な人。天ちゃんといる私は──きっと、未知の私だ。
あなたと一緒にいる時が1番幸せだって事は、もう少し秘密にしておくんだ。
やさしくわらうひと
3人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ