【終焉の使者団】既往のメッセージ【派生作品】 (ページ1)

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■やさしくわらうひとページ1

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　「ねぇ君、大丈夫？」そう言ってあなたは、私の顔を覗き込んだ。

　学校が嫌いなのは何も今に始まった事ではなくて、小学校五年生になる頃には、もうとっくに学校には行きたくなくなっていた。特別仲の良い友達がいる訳でもなく、良い先生がいる訳でもなく、勉強が好きな訳でもない。
　集団生活に向いていない私にとっては、学校はストレスでしかなかった。だから、毎週訪れる2日間の休日は、唯一気の休まる時間だった。

「ねぇお母さん、疲れた。早く帰りたい」
「じゃあ一人で帰ったら？」

　ただ、買い物に出かけるのは好きじゃなかった。
　ショッピングカートを押しながら歩くお父さんと姉ちゃんの後ろを、お母さんと並んで歩く。生まれた時から通っているこのスーパーは、私の中ではもう飽和してしまって窮屈だった。
　今日は肉や野菜が安い日だ。人が多い。

「レジめっちゃ並んでるじゃん」

　家族4人で、その行列に並ぶ。売り場の通路に飛び出した行列の最後尾だ。
　何分かかるんだか。そう考えていると、お母さんが言った。「あ、大葉買ってなかった！リュウ持ってきて！」
　【浪岡(なみおか) リユウ】という何とも奇っ怪な名前が私の名前だが、家族は私を「リュウ」と呼ぶ。そんなあだ名で呼ぶのは、彼らしかいないのだが。
　私は「優しいから持ってきてあげる」と言って、レジの行列から抜け出した。

「(あった！大葉)」

　きっと今日の夕飯は鰹のたたきだ。
　そう思いながら、行列の続く売り場へ戻り、皆を探す。もうレジに着いていたらしい。お母さんが手招きをしている。そちらへ向かおうとしたその時だった。
　スーパーの西入口から、けたたましい音が聞こえた。ガラスの割れる音と、人の悲鳴。ドタドタと品物の棚が倒れていく。

　──「魔獣だ！」その声が聞こえるよりも一瞬先に、私は一歩立ち退いていた。
　瞬間、スーパー内は混乱に包まれる。行列に並んでいた大人達が、一斉に逆方向の東入口へと走り出した。小柄だった私は、なすすべなく人の波に流された。

「お母さん！お父さん!! どこ！姉ちゃん！」

　お母さん達とはぐれたくない。お母さん達の頭が見えた方向に踵を返すが、足を進める事は出来なかった。
　右手に温もりを感じた。

「お嬢ちゃん、逃げないと！こっちだよ！」

　おばさんは私を抱き抱えて、人の波から守りながら、外へと連れ出してくれた。おばさんは残酷なくらい親切だった。