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No.131 ページ32

「僕の屍でも問題無いよね!」

横一文字に薙いだナイフの切っ尖は男の腹を掻っ捌く。飛び出した紅い飛沫と内臓を避けながら続いて、その後ろで拳銃を構えていた男の懐に素早く入り込み、太腿の付け根に水平にナイフを滑らせる。腱を斬られ倒れそうになる男の股に再度ナイフを差し入れると、今度は垂直に斬り裂いた。開裂された男の腹を見て、やはり女性とは違って面白くないと内心でごちる。
そして、手に絡ませていた鉄糸を軽く引くと、背後に居た数人の男の身体の部位が吹き飛んだ。一つ一つ慎重に張った罠はいとも容易く生命を削る。一人は腕を、一人は脚を、一人は頭を……まるで玩具を壊しているかの様な光景だ。

「ハハ、どうせなら道連れだ……一緒に地獄に堕ちてくれよ、僕も後から行くからさっ!!」

──ガッと後頭部に強い衝撃が来て、思わず前方に倒れそうになるのをなんとか堪える。後方に見えたのは、コンクリート片を片手にニヤけた男の不細工な顔。その視界の端に見える紅、僕の血だ。
(へぇ……)
直後、男の身体は炎に包まれた。赤嶺の異能力では無い。これは、僕が吹き込んだ式の性能だ。威力は赤嶺程では無いが、人一人を焼き尽くせる程度の火力はある。欠点は式の寿命が極端に短くなる事ぐらいか。

「ゔぁぁあああ!?」
「やるねぇ。隙を突くなんて利口だ、感心感心。でも、君が能力者だったらもっと良かったよ」

頭から滴る血を軽く拭う。
……無事和平案を成立した今、他の隊員の動きはどうなっているのだろうか。先程から連絡が取れない右京さんと深川さんは無事だろうか。僕はどれくらい人を殺し続けたのだろうか。
意識が少し朦朧とする、足が覚束無い。どうやら思った以上に頭の出血が酷いらしい。
(貧血、か……だが、此処で倒れる訳にはいかない)
手早くナイフを取り出し、挑発のつもりで掌の中でクルクル回して見せる。そして、コートのポケットにある折り紙全てをばら撒きながら、小さな独り言を呟く。

「ウチには手の焼ける子供が大勢居るからね。その子達が正しい道を歩める様に、屑は屑同士、仲良く踏み台になろうじゃないか」

それが愚かで哀れな大人()末路(役目)だ。

(首領さん。君には悪いが、僕はこれが終わったら自分で死にに行くよ。看取ってくれると嬉しいね……)
空は濃紺へと沈めていく。燃え盛る男を背後に従いながら、天を仰いで口角を上げた。

「最期にもう一度、君に逢いたい」

聞いてほしい事が山程ある。だから、その時は──

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花梨(プロフ) - 皆さまお疲れ様でした〜 (2018年9月14日 22時) (レス) id: e3aad0174a (このIDを非表示/違反報告)
透明少女(プロフ) - お疲れ様でした!あまり参加出来ずにいて申し訳ありませんでした…!本当にありがとうございました!! (2018年9月14日 21時) (レス) id: 6dddb2cb16 (このIDを非表示/違反報告)
睦都(プロフ) - 初めからずっと見てました!主催者様、参加者様の皆様お疲れ様でした!剣士君たちとても好きです(*^^*)ほんとうにお疲れ様でした (2018年9月14日 19時) (レス) id: 3a040f6594 (このIDを非表示/違反報告)
羊素。(プロフ) - 遂に完結ですか…少し寂しい気もしますが、主催者様、及び参加者の皆様、お疲れさまでした。 (2018年9月14日 5時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - お疲れ様でした! (2018年9月13日 18時) (レス) id: c46d432f11 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カレーライス x他10人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年8月4日 11時

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