No.144 ページ45
彼にはそれに準ずる相応しい相手が居る。そして、それは僕にも居た訳だ。認めたくない無いが、案外すぐ近くに。
「さようなら。君達の事は忘れないから、僕の事はどうか忘れてくれよ」
退散しようと歩き出すと、不意にコートが後方にぐっと引かれる。
咄嗟に振り返れば、10歳に満たないぐらいの少年がコートの裾を引っ張っていた。左手には赤い鶴の折り紙。
「君は……」
「何処行くの?」
もしかしなくとも、数時間前に接触したフライパンの少年だ。左手の鶴が何よりの証拠だ。既に効力が切れている所から、ちゃんとその役目を果たしてくれたらしい。
僕の様子を見て何勘違いしたのか、少年は折り紙のを突き出して、興奮気味に語り出す。
「おじさん、魔法使いでしょ! これ、銃を持った人をバーンって吹き飛ばしたんだ! カッコイイよね!」
「……そうかもしれないね」
どうやら少年はこの折り紙を気に入ってしまった様だ。拙いながらも役目を終えた式神を褒め称える。
変なのに目を付けられたなと思ったが、存外僕の周りは変なのが多かった。宙岡さんなんかがそうだった。そう言えば、彼女は会えただろうか。僕にその存在を重ねていたその人に。
「……あのさ」
「何?」
「僕と心中してくれる?」
「しちゅ……食べ物?」
「……ハハハ、やっぱり何でもないよ」
これぐらいの変わり者なら一緒に死んでも良いと思ったが、流石に生い先長いだろう少年の人生を潰しても何も面白く無い。
だが、この子と居たら少しはマシな終わり方をするのかもしれないと少し欲が出て来てしまった。
「ねぇ君、一緒に来る? 会いたい人が居るんだけど、一人だと寂しいんだ」
「おじさん寂しいの? なら、一緒に行ったげるよ。今日の僕はヒーローなんだ」
「……そう。じゃあ、お願いしようかな」
彼は僕達を見てヒーローだと思ったのかもしれない。しかし、僕はそのヒーローとは程遠い。
僕は旧世界の罪人。新世界の英雄達とは生きられない。だから、僕は──
幼いその手を引く僕はやはり愚かな罪人だった。
*
翌日未明。一人の男の遺体が発見された。
死因は頭部の傷による出血性ショック。死後硬直が解けかけており、更に言えば傷を治療した跡も見当たない所から、昨日の夜には既に死んでいたとされる。
では、あの場に居た彼は一体何者だったのかと安置された遺体を見て、皆口を揃えて不気味がっていた。
彼の最期に見た少年は死神だったのか。
その真相は火葬後、不自然に残った折り紙の残骸が物語っていた。
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花梨(プロフ) - 皆さまお疲れ様でした〜 (2018年9月14日 22時) (レス) id: e3aad0174a (このIDを非表示/違反報告)
透明少女(プロフ) - お疲れ様でした!あまり参加出来ずにいて申し訳ありませんでした…!本当にありがとうございました!! (2018年9月14日 21時) (レス) id: 6dddb2cb16 (このIDを非表示/違反報告)
睦都(プロフ) - 初めからずっと見てました!主催者様、参加者様の皆様お疲れ様でした!剣士君たちとても好きです(*^^*)ほんとうにお疲れ様でした (2018年9月14日 19時) (レス) id: 3a040f6594 (このIDを非表示/違反報告)
羊素。(プロフ) - 遂に完結ですか…少し寂しい気もしますが、主催者様、及び参加者の皆様、お疲れさまでした。 (2018年9月14日 5時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - お疲れ様でした! (2018年9月13日 18時) (レス) id: c46d432f11 (このIDを非表示/違反報告)
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