掃き溜めの星。

No.79 ページ30

大人を子供が殺す。
以前まではそうだったはずだ。

「…(何この状況…)」

子供と子供が争っている､謎の事態。
仕方がないのかもしれない､両首領が殺されかけたのだから。

…煩くて､ろくにゲームもできやしない。

淋から聞いた翠からの伝言は､外出を控えること。

アジトから出るななんて言われていないし､戦闘禁止とも言われていない。
ましてや“控えること”としか言われていないのだ。

それだけで彼女を押さえられるわけがない。

悠々と部屋から出てきて､街にまで出歩いている。
叶愛に結んでもらったのであろうサイドテールが風になびいてふわりと揺れた。
珍しいことに林檎は軍服を羽織っていなかった。

目的は一つだけ。

…ミルクは死なない。大丈夫。あの人は私の中では吸血鬼。

…吸血鬼が､死ぬなんて許されないからね､ミルク。

彼女はわかっている。

自分一人では何もできない。

体力もないし、自分勝手。

あげくの果てにはゲームばかり､食事すらも抜いたりして。

林檎にできることは､考えることだけ。

相手がどのように動くのか､攻撃パターンを暗記し､弱点を絞り出す。

弱点がない人間なんていないのだから。

だから､ここまで来た。

「…やっと着いた」

大事にする気はない。

侵入する気もない。

ましてや戦闘にする気もない。

少し“観察”に来ただけ。

目立たないよう､軍服は置いてきた。

日常生活にも弱点はにじみ出る。

その弱点を､林檎はすべて記憶するため､

ラビッシュのアジトの前にいた。

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