No.75 ページ26
何が何だかわからない。
何も感じない、感じられない。
痛いのだろうか?苦しいのだろうか?
どうでもよかった。
涙で海が出来るんじゃないかって位の悲しみと、行き場のない身の焦げるような怒りが込み上げていた。
いや、行き場がないわけない。
現に今、その怒りは白瀬へと向けられている。
いやそれも違う。オレが向けているんだ。
オレの影より素早い光の刃物は、美しく輝いては雨のようにオレに降り掛かってくる。
ならばとオレは、上から降ってくるそれと反対に、下から影を這わせる。
「…白瀬」
オレはただ、いつか聞いたアイツの名を呼ぶ。
でもその度に光の刃は力を強める。
「オレは……!!!」
オレは白瀬が大好きだった。
一緒に遊んだ。結構悪いこともした。
ちょっとワガママなお前も嫌いになれなかった。そのくらい大事な親友だった。
なのに、なのに、なのに!!!
神だとか仏だとかが定めた運命なら、今すぐにでも引きずり下ろして殺してやる。
許さない、赦せない。
どうせなら、この世の中全部。
こんな話も、こんな結末も!!!
消えてしまえばいい。消えてしまえばいい。
いっそその方が楽だ。
オレは目の前の
心の底から溢れ出す、どうしようもない悲しみと悔しさと怒りの激情に身を任せた。
血が抜けていく感覚がした。
目の前が霞んだ。知らない奴の亡骸も見えた。
悲鳴やオレを呼ぶ声も聞こえた。
それさえもどうでも良かった。
ただ、次第に抜けていく身体の力と、朦朧とする意識の中で、血の滴る白瀬を見つめていた。
…何が間違っていたんだろうか。
――――――――――――――――――――
何か聞こえる。
けど、音がこもっている様でよく聞こえない。
ぱっ、と重い目を開ければ、仲間達がこっちを見ている。
…医療部隊の皆だ。
「…っ首領さん!」
ガタッと席から立ち上がる。
痛みはそれほど感じない。いや、麻痺しているのか?それとももう無いのか?
それよりも遥かに身体が重く感じた。
まるで身体中に鉛を付けているようだった。
だんだんと部屋の外が騒がしくなっていく。
医療部隊の皆は、ほかの奴らを呼びに行ったのか居なくなった。
ふと、自分の手を見てみる。
いつも通りの、黒い手袋をした手。
でも血の色がついていた。
ついている血は、紛れもなく白瀬のものだ。
自分の手を見ているのも憎たらしくなって、血に濡れた手袋をゴミ箱に投げ入れた。
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すふ丸@課題消化につき低浮上(プロフ) - 盛り上がってますね……!更新ペースが落ちないので凄く安心感があります。えげつない量の課題を与えられてしまったため中々更新はできませんが、皆様が第三部にどう繋げていくのか、企画参加者として今後の展開を楽しみにしております\(^o^)/ (2018年7月29日 13時) (レス) id: d6d481a1f7 (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 第二部、二つの組織がぶつかってからの怒涛の更新……! 皆様お疲れ様です。 (2018年7月29日 13時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
一酸化炭素。(プロフ) - 遂に幻聴が聞こえ始めたかもしれないウチの子…誰か助けて (2018年7月27日 12時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - あはー、また謎の文字化けしてる……。一体なぜ。 (2018年7月27日 11時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - Sakiさん» 淋ちゃんは流架さんラブなので必然的に出ますよw (2018年7月26日 21時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
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