掃き溜めの星。

No.53 ページ4

「この遠藤洋一に清き一票を―――！」


「あーあ、どの政治家も同じようなこと言ってばっかりだね〜」


某日某所、彼は駄菓子屋の店内にある小さな畳の敷いてある部屋の窓から外を眺める
勿論、彼の代名詞と言えるようなお茶は彼の両手ですっぽりと包まれている
不法侵入ともとれるが、幸いなことに店主は留守だった

少子化、高齢化、ゆとり世代…
どの政治家も言っていることは大体同じだ

とうの昔に死んでしまった彼も今もこれからもずっと子供なわけで、そんなややこしい話は理解できるとは言えない


「おばあちゃん！駄菓子ちょーだい！！」


４、５人で訪れた１０行くか行かないか程の子供が店主を訪ねて来る
お茶を飲んでいた彼はというと、真顔でその光景を見ている状態
傍から見れば変人ともとれるだろう

しかし、そんな変な生物に子供が興味を示さない訳がない
キラキラと目を輝かせて群がっていく

彼の頬を叩いたり、引っ張ったり
髪をぐしゃぐしゃにされ、首も軽く締められる

最近の子供は実に恐ろしいものだと彼は死んだ目をしながら実感していた

一頻り遊ばれると、子供達は駄菓子へと再び興味を映す

彼はなるべく子供達の輪に入らないようにしながら、ぶどう味の風船ガムを3つ手に取る
全て十円で売ってくれる優しさは彼にはとてもありがたかった

ポケットから三十円を取り出すと、先程まで自分の居た部屋のちゃぶ台に置く
子供達は未だに先程と同じ場所で輪になってヒソヒソと何かを話している

所々、「秘密基地」やら「集合」という単語が聞こえてくる
その光景は、少し、ほんの少しだけ彼には寂しく感じた

一回目の蘇生を行った時にはもう、彼の首領がいて、快く自分たちの輪に入れてくれた
よそ者である彼を他のメンバーたちは優しく接してくれた
それ以降の記憶はちゃんとある

だが、それ以前は全くと言っていいほど存在しない
存在したとしてもどこか抜け落ちていた

憎くて仕方ない親の顔も、同い年程の誰かの手を取る自分がいても、誰かの顔が分からない
どうやって本来の人生の幕を下ろされたのかも、何処へ向かい、何処へ帰るのかも靄がかかっていて判別できない

何とも滑稽な頭だ＿彼はそう思った

もう全く関係のないことを未だに探る自分の脳すら滑稽に思える
疲れているのだろうという彼らしくない言葉で片付ける
店を出る前、何人かの子供が手を振ってくれたが、彼はそれを気が付いていないふりをして店を出た

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