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それから暫くして、烙飛はもう一度工事現場を通る道を歩いた。たまたまではなく、ジーナに手袋を渡す為に。
仕事、邪魔しちゃ悪いな。そう思いながら近くの壁に寄りかかって、スマートフォンを開く。特に見るものも聞くものもないのだけれど。
「あれ、烙飛じゃん！ どうしたのこんなとこで。また帰りの途中？」
「ううん。ジーナさんに渡したいものがあって」
背中に提げているリュックからラッピングした袋を取り出して、ジーナに渡す。中には昨夜完成させた出来たての手袋が入っている。
開けてみて。そう言うと、ジーナは袋を丁寧に開けて中を見た。すると一気に表情が明るくなる。太陽の様だ。眩しい。
「これ手袋…？」
「うん。ジーナさんに着けてもらいたくて」
「わ、可愛いね！」
手袋の端には、濃い緑の蔓や葉、そして赤い花の刺繍が端正に縫われていた。
「これ着けていいの？」とジーナは目をキラキラさせて尋ねてきた。「勿論。もとより貴女の為に作った手袋だから。それにサイズが合うか心配だし」
ジーナは手袋を脱ぎ、烙飛が作った手袋に手を嵌めた。
目測で作った手袋だけれど、大丈夫そうだ。うん、お洒落。似合ってる。
「ありがとう烙飛…！ 大事に使うよ！」
「どういたしまして。でもこちらこそありがとう。俺、ジーナさんのお陰で、本当の真心で作れた」
授業でやるより力を入れて作った。初めて、物を作るのにここまで本気になったかもしれない。ちょっと自分のセンスに自惚れながら、烙飛は小さくはにかむ。
ジーナは手袋を大事そうに握った。
＊
「ようジーナ。…ん、なんかいつもと手袋違うな」
休日の美術館は、平日よりやや人気が多い。そんな中、ガラスの中の絵画を見ていた諦架が、ジーナに気が付いて振り向いた。目に付いたのは、手を振る彼女の手袋。前に見たものと違っている。
あ、気付いた？ 可愛いでしょ。そう言いながら、ジーナは嬉しそうに胸を張った。
「お前が作ったの？」
「まさか！」
諦架が疑う様に聞くとジーナは「そんなわけない」と笑いながら否定した。
そして心優しい彼を思い出しながら言う。
「私のとっても素敵な友達がね、作ってくれたの」
──手套を脱す end
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