【幻想戦争】水槽の脳【派生作品】 (ページ2)

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　ジーナと初めて会ったのは、幻想組織としての夜だった。彼女といると、すぐ自分が何処の組織の誰なのかを忘れてしまう。よく考えると敵対していた。とは言うものの、彼女に対して敵対心は無いしジーナ自体は“いい人”だ。ジーナの考えや望みは否定したくない。だから、友達だ。
　「ねぇジーナさん、ジーナさんって──」手袋、それしか持ってないの？そう続けようとした所で、腹部からぎゅるる、と音がした。恥ずかしい事に自分の胃からの悲鳴だ。

「あっはは、お腹減ったの？なんか食べに行こうか？」
「うん。そこのファミレスがいい」

　タイミング悪く、しかも割と大きな音を鳴らした自分の腹部を押さえながら、近くのファミリーレストランに足を運んだ。
　ドリンクバーのメロンソーダを吸いながら、再度彼女の手袋と服装を見る。動きやすさを重視しているんだろう。特別洒落ていたり可愛かったりするデザインは見受けられない。勿体ないな、折角背が高くてスタイルが良いのに。
　今度こそ、と口を開きかけると、次は陽気な声が邪魔してきた。「ミートソーススパゲティとハンバーグです、お待たせ致しました〜」
　思わず眉間にシワが寄った。スパゲティを取りながら、ジーナは首を傾げて笑う。

「どうしたの怒った顔して」
「……別になんでもないよ。こっちの問題。…そういえばジーナさんって、オシャレとかしないの」

　やっと言いたい事を言えた。言葉を発しただけでもう満足して、烙飛はハンバーグに手を付けた。
　ジーナは眉を八の字にして苦笑いすると、「したいのは山々なんだけど、手袋と合わせるとさ」と頭を掻いた。確かにその厚手の手袋は、お洒落な洋服に合わない。手袋自体、可愛げがある訳でもない。
　ふーん、と返しながら、口いっぱいにハンバーグを詰めた。
　どうにかなんないかな。そう考えながら咀嚼して、結果的に「手袋を作ってプレゼントする」というアイデアに至った。厚手の手袋でお洒落、なんてのはあまり売っていないだろうし、手作りの方が喜んでくれそうだ。幸い裁縫は得意だし。

「今度はなんか嬉しそうだね。さっきからどうしたの？」
「なんでもない。秘密」

　そうと決まれば、素敵なものをプレゼントしなくては。不特定多数に向けて衣類を作るより、誰か1人の為に作る方が俄然やる気が出る。
　烙飛は手袋を作るのを楽しみに思うのを隠しながら、ハンバーグの隣に置いてある人参を食べた。