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「は?」
「えっ?」
「あの…今の見てなんとも思わなかったの?」
「えっ、あ、すみません空手やってたのかなぁとかしかスミマセンごめんなさい」
「いや別に君をとって食おうなんて思ってないよ」
単にコミュニケーションが苦手なのか、それとも身長の高い進吾に見下ろされている事に怯えているのか、はたまた両方か。
スマホを出し、撮った写真をもう一度見る。写真を見る限り、柱を殴り歪ませているのはこの少女である。サイキッカーである事は明確。つまりサイキッカーだが、進吾がサイキッカーである事には気付いていないという事だ。
進吾は少女の反対側を向き笑みを浮かべる。
「(憑依型か…筋肉強化若しくはパワー倍増? 見かけによらず攻撃的なのねぇ…オレの反発でも相当な力使わない限りあんな力出ないし、高校同じだから身元もバレる…今ここで潰すより利用した方がいいか。サイキッカーと思われてないみたいだし)」
振り向いて再び少女の方を向くと、進吾は愛らしいにっこりとした作り笑顔を少女に向けた。「君オレと同じ高校でしょ! 学校に喧嘩したってバレたらヤバイから、早く逃げよ」
「オレは3年2組の廻神進吾。よろしくね」
「あ…は、花幡萠夏です…! に、2年です」
「やっぱ後輩かぁ。…あ、寒いっしょ? ちょっと冷めてるけど肉まん食べる?」
強力なエゴを持つ萠夏に利用価値を感じた進吾は、早速萠夏を利用する為のパイプ作りを始めた。利用するには信用させるのが一番良い。
袋から肉まんをひとつ出し、萠夏に手渡す。萠夏は相変わらずキョドりながらそれを受け取った。
「今日の事は誰にも言っちゃダメだよ。秘密ね」
「は、はい!」
後日放課後。委員会終わりに、進吾は未だに一年生のロッカーに貼りっぱなしの名簿を見て、ニヤリと笑いながら呟いた。「…は〜な〜は〜た、と。へー2組なのね。なるほど〜」
当然仲を深めて能力を利用させて貰う為である。
「あ、あの、え、廻神先輩…私にご用でしょうか…?」
「うわ、ビクったぁ!」
「ひゃあ!」
「あ、ごめんごめん…んいや、クラス聞きそびれたなぁって、あと──」
「あと?」
いつの間に背後にいた萠夏に、進吾は数歩飛び退く。飛び退いた進吾に驚き、萠夏も数歩飛び退く。進吾はへらりと笑いながら頭を掻くと、肩に提げている鞄から映画のチケットを二枚取り出した。少し屈んで萠夏と目線を合わせ、甘えるように笑う。
「デートのお誘い♡ 土曜ヒマ?」
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ユーミン - とても話面白かったです。リクエストですが知り合いの小学生に喧嘩をしかけるところかみたいです (2019年12月12日 23時) (レス) id: 2c347db9d8 (このIDを非表示/違反報告)
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