【東京リベリアス】利己的テンカビト。【派生作品】 (ページ1)

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■零=ZERO:利己主義者の自序ページ1

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「天上天下、唯我独尊。三界皆苦、吾当安此」

　気が付くと、この四字熟語の整列が口から飛び出している事がある。
　息を吸って吐いて、吐いた息に紛れる様に。傾けたコップから水が流れ出る様に。自然に、そして無意識に。

　無意識とは時にその人そのものを形容する。意識をしていない人間が何れ程無防備な事か。
　しかしオレの“無意識”とは“己”である。「天上天下唯我独尊」。自分がこの世で最も尊い者である。
　褒められた事ではないが、人並み以上に自尊心は持て余している。し、その持て余した自尊心を注ぎ込める程の“強さ”という器も持っている。

　「三界皆苦吾当安此」。即ち、どの世界でも人は苦しんでいる、だから私が安らかにするという宣言だ。生まれてすぐに七歩歩くと、上と下を指して釈迦は言った。
　この言葉には本当に同意する。この世界も、きっと地獄も桃源郷も、皆何かしらの苦悩がある。例えそこに富や名声や愛があろうとも。

　人の人生とは心である。そして心は大きな穴が空いている。それを埋めるのが人生だ。埋めるモノは様々。愛、復讐、食、富、異性。
　オレの人生の“苦”とは、その心の穴そのものだ。穴が大き過ぎるのではない。埋めてくれるモノが少なすぎるのだ。

　オレは刺激を求める。スパイスを、スリルを求める。
　誰もが湯船に浸かれる様な平和ボケした日本のありふれた幸せは、とっくに飽和して何も感じなくなった。だから溶け切らないスリルを、全て焼き払ってくれる様なモノを探していた。

　──だから私が安らかにしましょう。
　だからオレがプレイヤーの求める刺激を味わって与えてやる。

　“サイキッカーの一番”を決めるゲーム。風の噂で相手を殺してまで一番を狙う奴らもいると聞いた。そういう狂ったゲームだ。たかがそんな事の為に自分の命を天秤に乗せるなんて。
　だからオレも乗せた。この命を落っことすギリギリまで、相手も命を燃やし尽くすギリギリまで、そんな命の張り合いに激しい快楽とちょっとした美学を見出だした。やっと見付けたのだ。オレの中で渦巻く衝動を向けても良い先を。

　特別一番に興味がある訳ではない。帝王学に耳を貸すほどのカリスマ性とやらは生憎持ち合わせていない。でも一番になれば、更に強い玩具(オモチャ)がオレを狙いに来てくれるかもしれない。なら一番になる他ない。

　利己的な異能戦が渦巻くこの天下で天上を手に入れるのは、誰よりも利己的であるオレが相応しいのだ。