└ 肆話:「 好きと嫌い、正義と悪 」 ページ4
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剣士はそれから初めて『好き』を知った。『好き』は『正義』だ。兄も、唐揚げも、こうして『悪』をズタズタに殺してやるのも。大好きだった。
「あー楽しかった。今日も悪い大人を一人退治」
「剣士遅い！ 捕まったらどうするのさー」
特に殺意を持った相手を殺すのは堪らない。思い出すだけでも身悶えしそうな程なのだ。今まで剣士をいじめて上から見下ろしてくる人間が、剣士を恐怖し、痛いと嘆き、涙を流しながら許しを乞うのだ。「いいよ」と嘘を吐いて安心したところを殺せば、絶望する表情がちゃんと見れる。
絶望に沈んだ顔の死体は、爪先からの怒りが快楽に変わってゾクゾクと爽快な気分を持ってきてくれる。鬱屈した気分を晴らしてくれる。
「捕まったら？ 捕まえる奴等を全員殺すよ。オレを邪魔する奴は『嫌い』だ。『悪』だ。悪は一人残らずオレが殺すって決めたから」
嫌いなものが分かってから好きなものも分かって、好きになる方法も知った。
仲間は好きだった。今まで孤独だったのに、ずっと一緒に居てくれてそれでいて優しくて、剣士の赤黒い瞳だって受け入れてくれた。だから好きなのだ。いや、大好きかもしれない。
友人のようで、家族のようで、何処かこそばゆいが悪くない感情だった。
友人と言えばあの子がいた。
同じような赤い瞳を持った、路地裏に住むあの子だ。子供だった剣士のたったひとりの友人で、親友で、相棒。願わくはずっと二人で遊んでいたかったが、二人で遊んだ後帰ると「どこに行ってたんだ」と決まって殴られた。
でもあの子は好きだった。どうしてだろう。
「(今頃何してんだろうなぁ)」
そんな事を思った三秒後にはあの子の事は忘れ、剣士は目の前の唐揚げに飛び付いていた。
歪んだ正義は、今日も一人の悪の命を奪った。
“好き”という皿の上に乗り、“嫌い”というソースをかけられ、“快楽”というスパイスを足され、“正義”というナイフで切り分けられた。正直言って甘美だ。悪を殺すのは。
もしかすると剣士に『正義』という概念は無いのかもしれない。自分を正当化するための理由なのかもしれない。快楽に辿り着く為の位置付けに過ぎないのかもしれない。しかしそれに関係無く、剣士に“救われた”子供もいたのだった。
その救われた子供が、剣士の歪んだ正義を加速させる。
「あァ、これだからヒーローごっこは辞めらんないんだよ」
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くろせ(プロフ) - 松宮カナメさん» いえいえ！翼くんはちょくちょく出そっかなと思っているので！ (2019年5月5日 3時) (
レス) id: c00e49c93d (このIDを非表示/違反報告)
松宮カナメ(プロフ) - 普通に好きです……翼を出してくれてありがとうございます！更新楽しみにしてます！ああ剣士くん尊い (2019年5月4日 23時) (レス) id: eb873f1f0d (このIDを非表示/違反報告)
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