◆01,「歪んだ正義」- 黒 ページ1
.
「そんな事言われたって、俺らは悪くないから関係ない」
長い前髪を揺らしながら青年は日本刀を片手に、横たわる男性を右足で踏む。男性はその黒い刀で斬られたのであろう、出血の止まらない腹部を歯を食い縛りながら押さえていた。すると青年は「誰が血止めていいって言ったんだよ」と足の先で手を退かせ、傷口を抉るように蹴った。
あ、やべ血ィ付いちゃった。青年は怒っているのかふざけているのか曖昧で、顔を歪めたり笑わせたり忙しなくコロコロと表情を変えた。
男性は悪徳企業の社長。児童売春、暴力団との違法な取引など、金に目が眩んで悪行に手を染めた。プライドや自尊心が高く、彼に逆らう人間など居なかったのだが──…、今は彼が逆らえない側の人間である。
「んーでもなんで俺を悪って思うのかは教えて欲しいな。うん、喋っていいよ。関係ない事喋ったら殺す。…はは、なんか拷問みてぇ」
「…だって…、今こうやって勝手に部屋入ってきて、中滅茶苦茶にして、人を殺してるだろ！」
「ふむ。…まぁあながち間違ってないけど、これは立派な社会貢献だからさ、褒めてくれよ。断じて、金目当てでやってる訳じゃあないからな」
青年は刀を持っていない左手で顎に手を当てる。どうやら自分が悪と言われる理由に一理ある様子だ。良かった、機嫌は損ねてない。男性が身の安全を一瞬、安心した時だった。
青年は右足を男性の顔に移し、思い切り体重を乗せて踏む。青年は左手で頭をボリボリと掻きながら言う。「なぁ知ってるか？ 人って言い訳する時必ず“だって”って言うんだ」じゃあお前の今の発言は、一体何の言い訳だとでも言うように、ずいっと顔を覗き込む。
「悪っていうのはお前らみてぇなクズの事言うんだよ。お前らと俺らを一緒にするんじゃねぇ」
相変わらず怒っているのかふざけているのか分からない。飴と鞭という言葉を人間にしたような、表裏が頻繁に見え隠れする青年に、男性は怯えるしかなかった。「あーあ、へっぴり腰になっちゃって」ダッセーの、と青年は頭を掻いていた左手をポケットに入れた。
『剣士〜！ 何やってるの！ 早く帰んないと見付かっちゃうよ〜』
「…え？ あーそっか、うんオッケーわかった。すぐ行く」
剣士、と呼ばれたその青年。彼の名は『黒瀬 剣士』。闇夜に現れ、夜な夜な人を殺し回っては「これは正義だ」なんて叫ぶ、見た目の割に幼稚な子供。『Rubbsh heap』という、ひとつの掃き溜めの頂点だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「募集企画」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くろせ(プロフ) - 松宮カナメさん» いえいえ！翼くんはちょくちょく出そっかなと思っているので！ (2019年5月5日 3時) (
レス) id: c00e49c93d (このIDを非表示/違反報告)
松宮カナメ(プロフ) - 普通に好きです……翼を出してくれてありがとうございます！更新楽しみにしてます！ああ剣士くん尊い (2019年5月4日 23時) (レス) id: eb873f1f0d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
