□ 第144話 後継者 □ ページ44
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「──ッッゲホ!! っけほ、ケホッ…ゲホッ…」
自分を天井に繋いでいた縄が千切れ、重力の赴くまま床へと落下した。静巳は、思い出したように咳き込んで呼吸を再開する。目の前が滲んで見えるのは咳き込んでいるせいか、それとも大好きだった父に裏切られたからか。一筋、水が頬を伝った。
まだ息を切らしているが、それよりも気になるものがあった。
またもっと、涙が流れた。今はもう、嫌いでしかないのに。失望の念しかないのに──未だに自分はこの男を父親だと思っている。その事実自体もう嫌だった。静巳の目の前には、振り子のようにゆらゆら揺れる、首を吊られた父がいた。
一周回って悲しみが怒りになった。「俺に一言も謝らず死ぬなんて」拳を握った。肉に爪が食い込んだ。ただ、その痛みだけが怒りの矛先を示してくれていた。
「…静巳。お前にはわかるだろ、この天秤に──この殺し方に、ある意味が。何の為の天秤だったのか」
静巳はバラトにそう言われ、自分を吊るしていた天井をもう一度見る。
父の縄と自分の縄は一本で繋がっており、天井のフックに引っ掛けられていた。バラトから見て、父は左、静巳は右。フックの右側には大きな結び目があり、その結び目がフックに突っ掛かっていた。この結び目があるから、静巳側の縄を切ったのに父の首を吊ることが可能になっていた。
そしてこれは──“金”か“命”か、どちらかを選ぶ天秤。どちらが重い筈なのかを、今一度確認する為の天秤。父はその礎となった。恐らく父が静巳を選んでみれば、死ぬことはなかったろう。
静巳は暫く考えたあと、「うん」と頷いた。バラトはニッと笑う。
「天秤はお前に傾いた！ ──お前は『意味』を見付ける才能がある。絶対に『意味』を忘れるなよ」
静巳は問う。「これからどうすればいい？」
バラトは答えた。「さあな。父親が死んで悲しいって演技でもすりゃいいんじゃねぇの？」
あれからずっと、『意味』を忘れず生きてきた。バラトに憧れて、バラトに焦がれて生きてきた。これはもう愛だ。愛じゃなければ何なのだ。
「バラトになりたい…？」戸惑う千秋に静巳は微笑んだ。
「“こんなところで”バラトが死ぬのは惜しい。終わるのは惜しい。…芸術は続く筈なんだ。終わっちゃダメだ。必要悪なんだ。バラトを次へ繋げる為に、この世の人々が誰一人だって『意味』を忘れない桃源郷を目指す為に俺はバラトになりたいの。──俺がバラトの後継者だよ」
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くろせ(プロフ) - 桐箪笥さん» あぁ！ ホントですね!! ご指摘ありがとうございます、訂正致します！ (2019年9月1日 20時) (
レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - 36ページの違いドロドロは血がじゃないでしょうか？違うのなら申し訳ないです (2019年9月1日 17時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - Noel*26さん» ありがとうございます！ やっと出てきましたね〜、ここまで来るまで長かった…(笑) (2019年9月1日 6時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
Noel*26(プロフ) - 相変わらずの早起き更新お疲れ様です（ ＾ω＾）ついに「ストックホルム症候群」という単語が本編に出てきましたね...うー、続きが気になる気になる木です（は？）これからも応援しています（ ＾ω＾）更新がんばって下さいー (2019年8月31日 7時) (レス) id: 3a6dfc07f6 (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 桐箪笥さん» ありがとうございます！ 頑張ります！ (2019年8月26日 22時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
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