□ 第97話 緊張感の日常化 □ ページ47
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「大丈夫かな、ラクくんのお父さん···」
「大丈夫、心配する事ない。ラクが応急処置したんだし、急所は外れてた筈だ」
那楽を狙って撃たれた不破の銃弾は、那音が邪魔をした為に那楽に当たる事はなかった。しかしその那音が庇ったのだから当然銃弾は那音に当たる。那楽が身内が銃撃にあっても冷静さを欠く事なく的確に処置を施し、那音と共に救急車に乗っていった。
その後家に那楽を抜いた四人で戻り一旦ソファーに座ったのだが、皆何処か落ち着きがない。千秋は目に見えてそわそわし、今にも部屋の窮屈さに飛び出しそうだった。バラトでさえ、何か思考を巡らせる様に眉間にシワを寄せ、いつもの余裕は無さげだった。デウスは、心配そうに呟いた千秋に、安心させるような穏やかな声を掛けた。
「······“無差別”なのか、ラクくんを“狙って”撃ったのか、だよね。ボクとしては、人通りの少ない時に一発だけ撃った辺り無差別にはとてもじゃないけど思えないんだけど」
「でもラクを恨む奴なんているのか? 犯罪者だってラクに助けられてる奴もいるだろ」
「この場合恨まれてるのはラクとは考えられない。言うならラクの“周囲の人間”だ。例えば···」
「“バラトを恨んでる人”······」
その千秋の言葉で、また部屋が静まりかえって窮屈になる。なんだかここだけ酸素が薄いようだ。
言うならばバラトを恨んでいる存在が一番多いのは確実なのだ。バラトは“自分がやった”と証拠を残していく犯罪者だが、デウスやステラは完全秘密主義。証拠は残さない犯罪者だ。だとすれば、バラトに財産を奪われたり家族を殺されたりした人間がバラトへの復讐を図っているのかも知れない。
「狙われるぞ、俺ら全員。特にクソガキ」
「え、私!?」
「バカかお前。強盗するときゴリッゴリの強そうな男を人質にとるか?返り討ち食らうぞ?」
「···え、えぇぇ嫌だぁ! もう誘拐されるのは十分なんだけど···!」
「···大丈夫、千秋は俺が守る」
頭を抱える千秋に、デウスはそう心強い言葉を口にした。瞬間視線は全てがデウスに移り、デウスはそこで言ったことに気が付いた。千秋は顔を真っ赤にして「自分に気があるのだろうか」と思ってしまう。実際そうだが。
デウスは「ぼ、ボディーガード的な! 千秋は女だから男の俺が守るって話! 勘違いするなよ!」と動揺と羞恥が隠せない赤い顔で急いで否定と言い訳をした。最近失言が多い今日この頃である。
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くろせ(プロフ) - 紅葉さん» ありがとうございます!検討致します (2019年5月10日 18時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 千秋ちゃんが大犯罪者でバラトが誘拐される立場逆転物語を見てみたいです。 (2019年5月10日 15時) (レス) id: 95b6da62c6 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - そうですか……わかりました!企画の検討お願いします! (2019年5月10日 0時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 白雪の鴉亭さん» 猩々木ちゃんは、千秋(嘘吐きさん)のターンで殺されたのではなく、投票で殺されたので、本当に死んでしまった形になります。企画の件、検討します! (2019年5月9日 23時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - 募集したキャラのその後とか書いて欲しいです!(ただ単にポインセチアがどうなったのか気になるだけですが……) (2019年5月9日 23時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
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