□ 第94話 表情 □ ページ44
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バラトは一人でソファーを占領し、デウスと千秋が借りてきた研究データと他国のデータを見比べていた。当然であるが元々は同じだが研究の仕方などは少しずつ違う。ファイルのページをペラペラ捲っていると、不意にぱさりと折り畳まれた紙が落ちた。バラトはそれを見ると、「おい」と相変わらずぶっきらぼうに皆を呼んだ。
「見ろこれ」
「これって…この薬…？ でもこのデータとちょっと違う」
「途中で止まってんだよ。つまり“諦めた”って事だ。途中で“自分では完成させられない”と思って諦めた。ラクやラクの母親を捨てて研究に打ち込んだ果てだ」
千秋は心配になってラクの様子を伺うが、ラクは表情の少しも揺るがせる様子も無かった。千秋はラクを見てきゅっと出掛けた声を飲み込んだ。ラクはいつもの様に眠そうな表情で「分かった、ありがとう」と言った。
「ねぇラクくん」
千秋はラクと二人のタイミングを伺って話し掛けた。するとラクはいつもの様に「なぁに」と眠そうに返す。千秋もいつもの様にラクを真っ直ぐ呑み込む様に見て言った。
「なんでラクくんはいっつも我慢してるの？」
「…我慢？ 我慢してるように見えるの？」
「うん。ずっと隠してるに近いかな。いつも感情を押し込んでる様に見える。私だけかな」
するとラクは淹れていたコーヒーにドプドプとミルクを入れて口に運んだ。ラクは「バラトさんは千秋さんを成長させるのが好きみたいだね」と笑う。彼女の観察眼の事だろう。バラトはいつも千秋を試すような行動をとる。それが分かるほど千秋の“目”は成長したのだ。
「なんで、か……。医者だから、が正しいかな」
開け放っていた窓から涼しい風が押し寄せる。千秋は目を細めてラクを見た。靡くカーテンにラクの顔が隠れて、表情が読み取れない。ただでさえよく見ないとラクの表情の変化は分からないのに。
「医者の世界ではね、大概『助けられなくて当然』って思ってた方がいい。助ける命より助けられなかった命の方が多い医者なんてゴロゴロいる。そんな中ね、医者はいつでも患者さんを不安にさせないように振る舞わないといけない。“ああ、いつもの先生だ”って思える表情で」
風が収まってカーテンが萎むように元の場所へ戻っていく。ラクは幸せそうに微笑んでいた。「医者でいられる事が幸せなんだ」とでも言うように。どうやら手出しする必要はなさそうだ──…、千秋はそう思いながら窓をピシャリと閉めた。
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くろせ(プロフ) - 紅葉さん» ありがとうございます！検討致します (2019年5月10日 18時) (
レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 千秋ちゃんが大犯罪者でバラトが誘拐される立場逆転物語を見てみたいです。 (2019年5月10日 15時) (レス) id: 95b6da62c6 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - そうですか……わかりました！企画の検討お願いします！ (2019年5月10日 0時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 白雪の鴉亭さん» 猩々木ちゃんは、千秋(嘘吐きさん)のターンで殺されたのではなく、投票で殺されたので、本当に死んでしまった形になります。企画の件、検討します！ (2019年5月9日 23時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - 募集したキャラのその後とか書いて欲しいです！（ただ単にポインセチアがどうなったのか気になるだけですが……） (2019年5月9日 23時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
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