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□ 第88話 母親 □ ページ38

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「ラクくんのお母さん?」
「うん。医者だよ。僕が中学か高校の時に死んじゃったんだけど。事故でね」
「そっか…ごめん」
「いや? 人は死に方選べないなぁって思ったよ。気にしないで」
「ほら見てよ大人の余裕。バラトも見習いなよ」
「うっせ」

 謝罪の言葉を述べると、ラクは平気だと伝えるように右手を挙げて微笑んだ。バラトにもこれほど広い心を持って欲しいものである。そろそろ行くか、とバラトが言うと、ぞろぞろと皆もベンチから腰を離す。

 暫く歩いていると、「じゃ、俺らはちょっと墓参り行ってくる」とラクとバラトは五人の軍団から離脱した。ラクの母親がどのような人かはよく知らないのだが、バラトが墓参りに行ったりする辺り、生前は素晴らしい人だったのだろう。デウスとステラに「どんな人か知ってる?」と千秋は聞いてみたが、当然知っているハズもなかった。

「あ、て言うかこの三人で遊ぶの久しぶりだね! 回ろうよいろんなとこ!」
「おーいいな。俺あのビル行ってみたい」
「ボクも!」
「いいよ! あそこはね、服屋さんとかがいっぱいあって…」

 千秋は二人の真ん中に入り二人の手を掴んで走り出した。



 一方、バラトとラクはラクの母、須賀井美楽の墓地へ向かっていた。ラクの一代前の“ラク”である。と言っても、美楽が初代になってしまうのだが。バラトは思い更けるように棒つきキャンディを口に入れ、「あっちで元気にしてるかな。ラク先生。“あいつら”と」と呟いた。

「そうだね。母さんの事だから、元気でしょ。天国に事故なんてないし」
「楽しみだねぇあっちに行くのが」
「バラトさんは地獄でしょ」

 暫くすると、美楽の墓石の前についた。ラクはいつの間に買っていた花束を添える。バラトは線香を焚いた。二人は静かに手を合わせると、同時に顔を上げた。

「ハッ、もうラクも25歳だぜ先生」
「初めてバラトさんに会ったの5歳のころだっけ?」
「まぁ変わらずチビなことには変わりな…いってぇ」

 人の墓の前で喧嘩するのも如何かと思うが、恐らく須賀井美楽という人は、ラクだけではない…バラトにとっても母親のような存在なのであろう。

 須賀井美楽は、素晴らしい女医だった。
 ラクと同じ髪の毛の色。その髪の毛は真っ直ぐ腰まで伸びていた。彼女はいつも笑顔で、真っ直ぐ貫くように人を見るバラトの言う“意味を与える側”の人間でありながら、“意味を見つける側”の人間でもあった。

□ 第89話 最高の女医 □→←□ 第87話 来た理由 □



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設定タグ:オリジナル , 小説 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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くろせ(プロフ) - 紅葉さん» ありがとうございます!検討致します (2019年5月10日 18時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 千秋ちゃんが大犯罪者でバラトが誘拐される立場逆転物語を見てみたいです。 (2019年5月10日 15時) (レス) id: 95b6da62c6 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - そうですか……わかりました!企画の検討お願いします! (2019年5月10日 0時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 白雪の鴉亭さん» 猩々木ちゃんは、千秋(嘘吐きさん)のターンで殺されたのではなく、投票で殺されたので、本当に死んでしまった形になります。企画の件、検討します! (2019年5月9日 23時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - 募集したキャラのその後とか書いて欲しいです!(ただ単にポインセチアがどうなったのか気になるだけですが……) (2019年5月9日 23時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くろせ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年4月28日 22時

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