□ 第82話 天才ピアニスト □ ページ32
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「ねぇ美春。美春は好きな風に笑っていいし、好きな風にピアノ弾いて良いんだよ。私、『ピアニストの相原美春』だけが美春じゃないと思う」
美春は目を見開いた。ああ、そうなのか。ピアニストだけが『私』じゃないのか。そこで、初めて美春は己が『自分』に囚われていたと同時に、自分はこれ以外にも複数存在するという事に気が付いた。
美春が『自分』に囚われたのは、周りがそれを望んだからだろう。彼女が勉強でいい点数をとれば、彼女への周りのイメージは『頭が良い』になる。よって、美春は頭が良くなくてはならない、テストで良い点数をとらなくてはならない。そんな状況が、誰が意識をしなくとも作られる。
それが容姿であっても、笑顔であっても、運動であっても、ピアノであっても。世界は『天才ピアニストの相原美春』を彼女に作らせたのだ。
「何、お姉ちゃんの癖に…お姉ちゃんの癖にさ……私に、指図とか…」
「うん。ごめんね生意気で」
「お姉ちゃん、は…！ 私にこき使われればいいの…！」
「うん。知ってるよ。ごめんね」
千秋は美春を抱き締めた。彼女はきっと、愛されたかっただけなのだ。愛されるのに手っ取り早かったのが天才ピアニストの相原美春だっただけだ。それと同様に、千秋も愛されたかった。だから、母の言う通りに動いていた。きっと、美春がこれからは私を愛してくれる。でも。
もしも、もしも──…。
それから一週間程立って、美春は外国へ発つ事を決めた。曰く「善は急げ」だそうで、そう言われて即座に千秋は準備を始めた。美春は玄関で靴を履き、「まだ〜？」と足をコンコンと玄関の石造りの部分にぶつける。美春は最近流行りのお洒落なジャージにかわいいサンダル、帽子に色つきサングラスとお洒落なJK、という感じだ。
一方千秋はいつかバラトに貰った水色のジーンズ柄が可愛らしいワンピ。首には目玉のネックレスがあった。「前から思ってたけどそのネックレスなんなの？」と美春は言いながら、階段から下りてきた千秋の手をぐいぐい引いた。外に出、空港へ向かうバス停までを歩く。
歩き出した千秋はぎゅっとネックレスを掴んだ。その時だ。
「千秋!!!」
張り裂けんばかりに叫ぶ声は、珍しくちゃんと自分の名前を呼んでいる。後ろを振り向けば、ずっと待っていた人が立っていた。
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くろせ(プロフ) - 紅葉さん» ありがとうございます！検討致します (2019年5月10日 18時) (
レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 千秋ちゃんが大犯罪者でバラトが誘拐される立場逆転物語を見てみたいです。 (2019年5月10日 15時) (レス) id: 95b6da62c6 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - そうですか……わかりました！企画の検討お願いします！ (2019年5月10日 0時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 白雪の鴉亭さん» 猩々木ちゃんは、千秋(嘘吐きさん)のターンで殺されたのではなく、投票で殺されたので、本当に死んでしまった形になります。企画の件、検討します！ (2019年5月9日 23時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - 募集したキャラのその後とか書いて欲しいです！（ただ単にポインセチアがどうなったのか気になるだけですが……） (2019年5月9日 23時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
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