□ 第77話 人生の区別 □ ページ27
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「うるさい!!! そもそもアンタ誰よ!! 人の家に勝手に上がり込んで!! 何したいわけ!!?」
寿美子は早口で捲し立てながらバラトに詰め寄る。バラトに平手打ちを食らわそうとした、その瞬間。バラトは振り上げあられた寿美子の腕を捻り上げ押し返した。ドタンと音を立てて倒れこんだ寿美子の足にバラトは刺さっていたナイフを抜き取り、刺した。大きな声を上げて寿美子は踞る。そして、バラトはヤンキー座りをして言った。
「俺はバラトだ。うっせぇのはお前だろーがギャアギャアギャアギャア」
千秋は二度目のバラトの『犯罪者の雰囲気』を感じ取って体を強張らせる。その悪魔に対峙しているかのような重圧感。圧倒的な恐怖。重くのし掛かるように前のめりになったバラトの影に隠れた寿美子は、歯をガタガタと鳴らしてバラトを見上げた。
「お前いっぺんに質問し過ぎなんだよ。そこは親子そっくりってか? …あー…何したいのかか。強いて言うなら、家庭環境の改善? 心の荷下ろし? 的な?」
バラトは棒つきキャンディを噛み砕いて言った。「アキ、お前が今までどう思ってたか、どうして欲しかったか。心の底にあるもん言ってみな」千秋はそれを聞くと、未だに首に下げているバラトからのネックレスをぎゅっと握ると、座り込む寿美子を見下ろした。
「私、お母さんが大好きだったよ。優しかったし、面白かったし。その頃は『愛』だった」
「「でも過去形ってこと忘れんな」」
バラトと千秋の口から出た言葉が丁度同じことで、同じスピードで寿美子に伝わった。寿美子は千秋が今までとは違っていることに気が付いた。そして、今の自分が千秋と同じような状態であることに。今まで寿美子は千秋を恐怖で支配していた。暴力の恐怖、暴言の恐怖。そんな他人の顔色を伺う生活をしていた千秋には自然と洞察力が根付いていた。
寿美子は千秋に「行かないで」とすがりよった。千秋はぐっと拳を握ったあとその手から力を抜く。「…お母さん」そう小さく呟いたあと、千秋は思い切り寿美子の頬を叩いた。
「いつまでも子供に依存すんな! 子供は親の化粧じゃない! 美春だってそう! お母さんにだってお母さんの人生があるでしょ!? いい加減自分と子供の区別出来るようになりなよ!」
千秋は先程までわめき散らしていた寿美子の声より大きい声で怒鳴った。黙って大人しく言うことを聞くのが娘の定義ならば──…今ここで娘をやめよう、と。
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くろせ(プロフ) - 紅葉さん» ありがとうございます!検討致します (2019年5月10日 18時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 千秋ちゃんが大犯罪者でバラトが誘拐される立場逆転物語を見てみたいです。 (2019年5月10日 15時) (レス) id: 95b6da62c6 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - そうですか……わかりました!企画の検討お願いします! (2019年5月10日 0時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 白雪の鴉亭さん» 猩々木ちゃんは、千秋(嘘吐きさん)のターンで殺されたのではなく、投票で殺されたので、本当に死んでしまった形になります。企画の件、検討します! (2019年5月9日 23時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - 募集したキャラのその後とか書いて欲しいです!(ただ単にポインセチアがどうなったのか気になるだけですが……) (2019年5月9日 23時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
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