□ 第67話 バラトの名前 □ ページ17
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「俺の名前はアカザタイガだ」
「アカザ？ タイガ？」
「赤に正座の座、諦めるに橋を架けるの架で『赤座 諦架』だ」
「でも諦めるって漢字名前に使う？」
「何も諦めるだけが使い方じゃないだろ。“諦めない”って捉えればいい」
「あ、そゆこと」
「それに、『諦』は仏教だと真理や悟りを意味する。まこと、本当、あきらかにするって意味もある。親は俺にそういう“意味”を込めて名前を付けてくれたと解釈してるよ」
「…バラトっぽい名前だね」
「まぁ、“意味”を最初に教えてくれたのは母親だからな」
母親について聞きたくなったが、先程のバラトの言葉を思いだし声を引っ込める。しかし、やっとバラトの本名を知れたのだから本名で呼びたい。そう言うとバラトは少し嫌そうな顔をした。なんでと言えばなんとなく、と返ってきた。
「みんなの前ではバラトって呼ぶからさ、ふたりの時はタイガって呼ぼうよねぇタイガ〜！」
「タイガのあと名前伸ばすな虎みたいだろうが」
「Tiger！ この虎！ 虎って呼ばれるのとタイガって呼ばれるのどっちがいい！？」
「……。……タイガ」
「よし決まり！よろしくタイガ〜！」
「だから伸ばすな」
タイガを伸ばされてタイガーになるのはよくあることだ。バラト…いやタイガは、「そういや昔もそういう風に言われたな」と思い出に浸る様に目を閉じた。
“よろしくタイガ〜！”
“え、虎？”
“違う、タイガ、だよ”
“そーだよタイガだ。虎にすんな！”
“えっへへ、ごめんタイガ〜”
“…もういい”
金髪の少女が嬉しそうにタイガの名前を呼ぶ。それを見て少年はタイガの名前を虎と勘違いしたが、別の少年が訂正する。幼いタイガはむっと顔を曇らせると不貞腐れた様に本を開いた。夏の事だった。
「赤座ってカッコいい苗字だね。出席番号私のあとくらいかな」
「あいはら、あかざ…。まぁそうなるな」
「えへへなんか嬉しい〜」
「気持ち悪いなお前」
バラトの本名を知って思わずにやける千秋。バラトは片眉を上げて気持ち悪いと言った。恐らく他に知っている人はそういないであろうバラトの本名を知って優越感に勝手に浸る千秋だった。
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