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□ 第64話 手 □ ページ14

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「これかな…? 英語…。読めないな」

 薬が入っていそうな棚を探し、英語で書いた紙を貼ってある瓶を手に取る。英語は得意な千秋だが、医療のような専門用語には疎い。読めなくて当たり前だろう。「バラト、昔はアメリカに住んでたのか…じゃあアメリカ人の可能性大?」総会でバラトが色んな国籍を持つ犯罪者に対し色んな言葉で対応していたのを思い出しながら歩く。

『バラトさん!!! 怒るよ僕!!』
「うっせ…もう怒ってんじゃねぇかバカ」
「何してんの…」

 部屋に戻るとバラトはスマホを摘まんで怒るラクの話を聞いていた。何喧嘩してるの、と聞けば「ラクから本借りパクして怒られてる」とバラトが返した。元気なのか具合が悪いのかどちらかにしてほしい。ラクは「…次会う時には返してね!」と言うと通話を切った。バラトは深い溜め息をつきながらスマホを放り投げた。

「薬と水。何か食べれそう?」
「…んー……、食える」
「おっけ、何か作ってくるから何かあったら言ってね」

 千秋は部屋から出てキッチンに向かった。冷蔵庫を開けラップで包んだ米や卵を取り出す。やはり具合が悪いときはお粥だ。確かバラトは薄味が好きだったな、と軽く味付けをする。料理の味が濃いと「マヨネーズ入れすぎだ」とか言われてしまうので、最近は気を付けるようになった。お粥を持っていくと、バラトは起き上がってお粥を受け取った。

 バラトがお粥を息を吹いて冷やしているのを見ると、なんだか可笑しい。千秋はそう思いながら笑うのを必死にこらえた。バラトは「悪いな。多分明日には治る」と呟いてお粥を口に入れた。そう言えばバラトも体調崩したりするんだなぁと思いながら、千秋はそっかと返した。



 次の日、昨日と同じように朝を迎える。久し振りに自分のベッドで朝を迎えたバラトは、毛布を被って床で眠っている千秋を見ると、頭をボリボリと掻いた。本当に次の日には治っていたようで、バラトは自分の体調の良さに目を見開いた。バラトは千秋の前にしゃがむと、ありがとう、と小さな声で言った。

 そして、そっとその手を近付けた。



「…起きろバーーーーーーーカ!!!」
「いった…いったい痛い! 痛い! は!? もう元気かよウザいなんか!」

 近付けた手をどう使うかはバラトの気分次第だ。今回はその手で千秋を撫でたりするわけではなく、暴力を振るう為に使ったようだが。いつものように叩き起こされた千秋は、頬を膨らませて起床したのだった。

□ 第65話 オベンキョウ □→←□ 第63話 体調不良 □



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設定タグ:オリジナル , 小説 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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くろせ(プロフ) - 紅葉さん» ありがとうございます!検討致します (2019年5月10日 18時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 千秋ちゃんが大犯罪者でバラトが誘拐される立場逆転物語を見てみたいです。 (2019年5月10日 15時) (レス) id: 95b6da62c6 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - そうですか……わかりました!企画の検討お願いします! (2019年5月10日 0時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 白雪の鴉亭さん» 猩々木ちゃんは、千秋(嘘吐きさん)のターンで殺されたのではなく、投票で殺されたので、本当に死んでしまった形になります。企画の件、検討します! (2019年5月9日 23時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - 募集したキャラのその後とか書いて欲しいです!(ただ単にポインセチアがどうなったのか気になるだけですが……) (2019年5月9日 23時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くろせ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年4月28日 22時

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