□ 第45話 棒付きキャンディ □ ページ45
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会場内に戻り各々休むなり遊ぶなりしていたが、そこで千秋はバラトの異変に気が付いた。いつも肌は男性にしては白いのだが、今はいつにも増して青白く目は何処か虚ろだ。するとバラトはぐらりとふらつきガシャンと多少の音を立ててテーブルに手を付いた。明らかに異常だ。千秋はバラトに駆け寄り声をかけた。
「バラト、大丈夫!? 具合悪いの!?」
「ちょっとな………」
「なんで…風邪…?」
バラトの額に手を当てるが特別熱いわけではない。寧ろ冷たい気がするほどだ。千秋の心配そうな顔を見るとフッと吹き出しバラトは笑った。いつもより深い溜め息をつくとバラトは徐に呟いた。
「…飴を食ってないからだ」
「…は?」
「俺は毎日4本以上をノルマにしてるんだがまだ2本しか食ってない…そのせいで身体のバランスが崩れて気持ち悪いんだ」
「……はァァ???」
棒付きキャンディ1日4本以上がノルマ?それを食べないとバランスが崩れる??頭大丈夫かコイツ。千秋の頭の中は心配して損したという思考とバラトへの怒りでいっぱいだった。しかし思い返してみれば確かに棒付きキャンディを1日4本は食べている。そこまでキャンディが好きとは、しかも少し食べないだけで体調を崩すとは…、やはり棒付きキャンディ依存性というのも間違いではないのかもしれない。いや、もしかしたらあのキャンディに麻薬とかが入っているのかもしれない…!
「じゃ、じゃあ取りに行きなよ…どこやったの」
「着替えた時の部屋に置いてきた上着ごと」
「さっさと取りに行けキャンディトサカ野郎」
千秋は目を吊り上げてバラトを会場から押し出した。バラトは頭を掻きながら長い永遠と続く迷路のような廊下を抜け部屋の扉を開けた。しかしそこに自分の上着がなく…スタッフが丁度捨てようとしている所だった。
「おい、それ捨てんな。俺のだ」
「そうでしたか。失礼致しました」
自分の上着の無事にひとりで感動しながら右ポケットをさがす。いつもならここに棒付きキャンディがはいっているはずである。“はず”なのだ。恐らく落としてそのキャンディを誰かが拾って捨てたかである。バラトはブルブルと震えながらその捨てた見知らぬ人への恨みを増幅させた。
何かないものか、と一生懸命探したのだが無駄だと言わんばかりに上着が擦れ合う音がガサガサ鳴るだけだった。バラトはまた溜め息をつくと、「しょうがねぇ、最終手段だ」と小さく呟いて上着の左ポケットに手を入れた。
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くろせ(プロフ) - 漣さん» ほんとですね!誤字報告ありがとうございます!訂正致します! (2019年4月2日 17時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
漣(プロフ) - いつも更新楽しみにしている者です。42話の「ステラは別の本物と思われるダイヤモンドを取りだし、そのまま逃げ出した。」という文章なのですが、デウス君ではないでしょうか?勘違いでしたらすみません!コメント失礼しました。 (2019年4月2日 17時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - くろせさん» ああ、そうでしたか。すみません!!! 了解です、その機会があれば、またコメントします。バラトニキと千秋ちゃんがすこなのでお気に入りに登録します。改めて失礼しました。 (2019年4月1日 14時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 飴ん子さん» すみません、今はキャラクターは募集しておりません…。また続編とかで募集すると思うので、その時までお待ちくださいませ! (2019年4月1日 13時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - 素敵な一次創作ですね…!バラトさんすこ。(唐突) この素敵な企画に是非ともキャラクター提供したいのですが、どうでしょうか? (2019年4月1日 11時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
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